大手メーカーの自動車と遜色のない仕上がり
では、SU7の実力はどれほどのものなのだろうか? 筆者は2024年6月末に上海にあるシャオミのストアを訪問し、実車を体験してきた。残念ながら路上での試乗はできず、運転席周りの操作性やシートの座り心地などの車内体験のみだったが、SU7の大きな可能性を感じさせた。
シートや車内インテリアの出来栄えは中国メーカー製だからといって安っぽさを感じさせるものでもなく、言われなければ日本やヨーロッパの自動車メーカーが作ったものとの差は感じられない。もちろん細かい部分をあら探しすれば何らかの違いはあるかもしれないが、自動車に関して「ただの一般ユーザー」に過ぎない筆者から見ると、購入をためらわせるような欠点は見当たらない感じだ。
運転席と助手席の間には16.1型の大型ディスプレイが搭載されており、ここから自動車の制御を行うことができる。SU7には数多くのセンサーやカメラが搭載されているので、自動車後方のカメラ映像を確認することもワンタッチだ。またSU7はシャオミのスマートフォンと同じシステム「HyperOS」が採用されており、スマートフォンと同じアプリを動かすこともできる。
さらに自分の持っているシャオミのスマートフォンの画面をそのままSU7のディスプレイに投影することも可能だ。そのため普段使っているスマートフォンの環境をそのまま車内でも利用できるのである。これはEVとスマートフォンが同じシステムを使っているメリットの1つだろう。シャオミ独自の音声AIシステムを使い、車内からのナビやお店検索も可能だ。
中国全土にはシャオミストアが2000店舗以上あるという。そのうち現時点では87の店でSU7を展示している。SU7展示の店舗はまるで自動車ディーラーのような広い空間で展示が行われている。しかし、ディーラーの店舗と大きく違うのはここはシャオミストアであり、店内の一角にはシャオミのスマートフォンやスマート家電も販売されているのだ。「スマートフォンを見に来たついでにEVも見る」、これは従来の自動車専門店とは大きく異なるユーザー体験を提供できる。
事実、筆者がシャオミストアを訪れたのは平日の夜だったが、店内にはスマートフォンや周辺機器を見に来た近所の家族づれが何組も来店し、帰りがてらにSU7の乗車体験を楽しんでいた。また話題のSU7を見に来た客が、前客の試乗が終わるのを待つ間にシャオミのスマートフォンを試用する姿も見られた。シャオミはSU7の展示・販売店舗を年内に220店舗まで増やす予定で、SU7の認知は今後さらに広がっていくだろう。
上海にあるシャオミストア、自動車ディーラーのような広い空間だ(筆者撮影)
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