連載:俺のクルマと、アイツのクルマ
男にとって車は名刺代わり。だから、いい車に乗っている人に男は憧れる。じゃあ“いい車”のいいって何だ? その実態を探るため「俺よりセンスいいよ、アイツ」という車好きを数珠つなぎに紹介してもらう企画。
【写真19点】「’80年代のトヨタ・コロナバンに注ぐ並々ならぬ愛情」の詳細を写真でチェック ■48人目■宮本哲明(41歳)
宮本哲明(みやもとてつあき)●MIYAMOTO SPICE代表。運営するショウルーム&ストア「ブランデット東京」でさまざまなジャンルのPRや販売を行う。テーラードジャケットのみを展開するブランド「ジャケット」を手掛け、レストランでスパイス料理の修行を行うなど「ブレンド」をテーマに活動を行っている。
トヨタ コロナバン 1600GL
1957年から2001年まで販売・製造されていたトヨタが誇る人気シリーズ、コロナの商用モデル。こちらは6代目にあたり、“安全コロナ”の愛称で親しまれた先代のデザインや安全性能をしっかり踏襲しつつ、ヘッドライトやバンパーといったディテールをアップデート。質実剛健な大衆車としても広く親しまれた。
苦労の末、念願のコロナバンを手に入れるが……
ユナイテッドアローズで経験を積んだのち独立し、現在はMIYAMOTO SPICEの代表を務める宮本さん。国産の旧車に魅了されたのは二十歳前後の頃とかなり早め。当時通っていた予備校の講師が無類の旧車好きで、その影響だったという。
講師が当時乗っていたのは日産のサニートラック、通称・サニトラ。縁あって車を譲ってもらった宮本さんは、徐々に旧車の魅力に取り憑かれていく。
「数年ほどサニトラに乗っていましたが、上京を機に泣く泣く手放したんです。だけど、あの旧車ならではの風情、エンジン音、オイルの匂い……。東京で仕事するようになってからも、『古い国産車に乗りたい』っていう気持ちは頭の片隅にずっとありました」。
それから十数年が経ち、再び宮本さんは旧車に乗ろうと決意する。
「約7年ほど前、僕の中で『旧車を運転したい』という欲求が盛り上がってきたんです。その頃、気になっていたのがトヨタのコロナバンでした。
コロナシリーズはいわば大衆車。セダンも好きですが、僕にとっては商用車の風情を持っているバンってところがミソでしたね。日本の働く車、っていう感じに惹かれたんです」。
運命の一台と出合うためなら、遠方への出張も厭わない。Web上で良さげな車体を見つけては、中古車店に足繁く通う日々を送った。群馬、広島、岐阜、福岡……。さまざまな地域に訪れ、出合ったのが現在の相棒である。
「Webでこの車を見つけて、最終的には広島まで行きました。実物を見てみると状態はすごく良く、エンジンも正常。即決してその場で購入しました。
でも半年後、車を取りに行ったらエンジンが上手くかからない。調べたらキャブレターの部品がひとつ抜け落ちていたんですよ。最終調整の段階で無くなってしまったのかもしれません。普通はないことですが……」。
それでも宮本さんは諦めず、フェリーで東京へと車を持ち帰った。
「東京に帰ってからもそのままの状態で半年ぐらいは乗っていましたが、やはり頻繁にエンジンが止まってしまう。友人から紹介してもらった群馬にある車店のおっちゃんに相談したんですよ。一度車を入院させて、部品を探してもらうことにしました」。
だが待てど暮らせど部品が見つかったという連絡はなく、気が付けば1年が経っていた。
「ある日、ついに『部品を見つけた』と電話があったんです。改めて部品を付け直してもらい、キャブのオーバーホールをして、晴れて、難なく乗れるようになりました」。
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