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業界の勢力図を塗り替える!?

ちょっとした異変を感じたのは、21世紀に入った頃でした。出張で訪れるヨーロッパの主要都市、自腹では絶対に泊まれない、ややお高めのホテルの部屋の景色が変わりつつあった。

それまで、この手のホテルのテレビといえばシャープやソニーが定番で、「実家と同じヤツだ」などと、無邪気にリモコンをピコピコしていた。ところが、しだいにLGが幅をきかせるようになっていったのだ。

当初は危機感もなく、「LG悪くないやん」とか、「デザインはLGのほうが尖っているかも」なんて、ノンキに考えていた。

こう書くと上から目線のようですが、そうではなく、オレたちのシャープやソニーが負けるわけないと思っていたのだ。けれども、その後の展開はご存じのとおり。

BYD シールは、あのとき、ヨーロッパのホテルで見たLGのテレビと重なる。性能には問題がないどころか素晴らしいし、デザイン責任者のヴォルフガング・エッガーが手掛けた造形は、彼の傑作であるアルファ・ロメオ8Cを彷彿させる。

まさか、ですよね。車が液晶テレビと同じ轍を踏むとは思えないし、思いたくない。でもあのとき、“世界の亀山”ブランドが負けちゃうなんて、誰ひとりとして思っていなかったのだ。

モータージャーナリスト
サトータケシ
フリーランスのライター/エディター。20代の車好きを取材したところ、ほぼ全員が2000年代以前の“ネオクラ”に乗っていたとか。「若者は車離れではなく、“新車離れ”なのだと思いました」。



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