遊びを呼ぶ建物、面白いコトを引き寄せる場所
桐島ローランドさん(以下、ローランド) 僕がバイカーズカフェ「フェリシティ・カフェ(Felicity Cafe)」をオープンするのは、元々バイクショップの「幸福商會」さんがあった場所。だからこの地に決めたというわけではなく、実は偶然の巡り合わせなんですよね。
新倉シンジさん(以下、新倉) そうでしたよね。大昔はハヤマ電気という電気店、そのあとは、ジェリー・ロペスが立ち上げたサーフブランド「ライトニングボルト」の輸入代理店などが使っていたそうです。
この母屋の隣に小さな小屋があるんですが、そこがボードのシェイプルームだったんですよ。スタッフはサーファーだから、波が来ると仕事は二の次で遊びに行っちゃっていたらしい。そんなこんなで事業が立ち行かなくなったのか、閉鎖されてからはスケートボードのランプが設置されていたみたいです。
在りし日の幸福商會。2Fは新倉さんの事務スペースだった。現在はカフェのラウンジスペースとなっている。
ローランド 幸福商會さんの前にもそんな歴史があるというのは今日初めて知りました。
新倉 私がここに「幸福商會」を構えたときも、不動産会社から「ワケあり物件」だと言われたんですよ。しかし、即決しました。
幸福商會のショップ&ファクトリー時代の構造[左]を活かし、外壁にはガルバリウム鋼板を張るなど、ローランドさん手掛けるカフェ[右]では全面的にリノベーションしている。
直感に従って決めたら、その場所は伝説的バイクショップだった
ローランド 僕自身、トライアンフに跨っていた時期があるので、「神奈川に、幸福商會というヴィンテージトライアンフの名ビルダーがある」と聞いてはいました。しかし、横浜か横須賀の辺りにあるショップだと勘違いしていたんですよ。ずっと葉山だったんですか?
新倉 最初に幸福商會という屋号を掲げたのは鎌倉の材木座で、中国製の「幸福」というバイクの輸入をしていたんです。そのあと、横浜の本牧に移転した頃からヴィンテージのトライアンフの輸入やカスタムをメインとするようになりました。元々はバイク畑の人間ではなく、古着の買い付けなどをしていた、ずぶの素人だったんですけど。「幸福というバイクを皆に紹介したい」「トライアンフってカッコいい」という不思議な閃きがあったんです。
ローランド 僕と一緒ですね。飲食の素人がコーヒー店をやるっていうのと。
新倉 そのうちに店舗が手狭になり、新しく物件を探してここに出合ったんです。先程「ワケあり」と言ったように、天井から雨漏りしているくらいボロボロでしたが、不思議とチャレンジングな気持ちを掻き立てられました。
ローランド 僕も直感で、ひと目見てその場で決めました。天井の高い空間が好きで、見た瞬間イケると思ったんですよね。この階段もすごく魅力的だし、フロアの抜けが丸い円になってるところも気に入りました。
新倉 何組かに内見をしてもらってはいたのですが、ローランドさんはすぐ決めてくださいましたね。考える前に動くタイプの、この場所を楽しみ尽くしてやる!というマインドの人でないと難しい物件なのかもしれません。
幸福商會時代の1Fガレージ。[左]梁のあらわしの構造などはそのまま活かして、カフェで継承している。[右]
ローランド インターネットでこの物件の情報を見つけて、不動産会社に問い合わせると「ここは幸福商會というバイクショップがあったところです」と返事があり、思いもよらない偶然にびっくりしました。
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