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恋愛感情を利用する“デート商法”とは

ネット上ではなく、実際に会って騙す商法もある。恋愛感情を利用して物を売る商法を“デート商法”と呼ぶ。僕は以前、デート商法にわざと引っ掛かってみたことがあった。

ある日、「僕の働いている会社は、デート商法で稼いでいます。潜入しませんか?」と男からタレコミがあった。僕は編集者から「潜入してこい」と指示された。人の計画に乗っかるのは主義ではなかったが、そのときはデート商法に興味もあったので乗ってみた。
 


編集者に指示された販売店に行くと、女性の販売員がいた。店といってもオフィスのような場で面談のような形式だ。イメージではスタイルの良いモデルのような販売員に口説かれるのか? と思っていたが、出てきたのはあんこ型の女性店員である。

売っているのは50万円超の短毛毛皮のコートで、ゴリゴリと薦めてくる。
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「この毛皮を着てる人となら、デートしてもいいな。50万円って高く感じるかもしれないけれど、この先ずっとモテ続けるって確約されると考えると決して高い買い物じゃないですよ~」と話してくる。

時折「一緒に遊びに行けるかも」みたいな営業トークを混ぜてくるが、あんまり上手くない。

正直、恋愛感情は抱かなかったが、押しが強くて断りづらい雰囲気にはなった。とはいえ、企画で50万円の毛皮を買うわけにはいかないので頑張って断ると、あんこ型の女性はふくれっ面で罵詈雑言を浴びせてきた。

「だからアンタはモテないんだよ。一生そうやって底辺で生きなよ!」と。僕は黙って席を立って家に帰った。



想像していた恋愛商法とは随分違ったが、販売員によってはもっと恋愛押しするらしい。記事としてはそこそこの反響だったのだが、問題なのは掲載されてから数日後。

「村田さん? ああいう記事書かれると困るんだけど。ちょっとうちの組に遊びに来てくださいよ」などと延々と、電話がかかってきたのだ。

「若い衆が怒ってて」などと、暗に「自分は暴力団であり、来ないとひどい目に遭うぞ」と脅してきた。編集部に相談してみたが「知らん、自分でなんとかしろ」と冷たい対応でだった。出版社というのはそんなものである。



結果的に会いには行かなかったが、酷い目にも遭わなかった。この会社が本当に暴力団関係だったのか、ふかしだったのかはわからない。ただデート商法を仕掛けてくるような会社は倫理もへったくれもなく、脅してくるし、金を取ろうとしてくる。そもそも、最初から接触しないよう気を付けたほうが良い。

余談だが、編集部にネタをタレこんだ男は数年後に、部屋で不審死しているのが見つかった。
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キャバ嬢にガチ恋で大金をつぎ込むケースも

ここまでは明確な詐欺を書いてきたが、見ようによっては世の中はロマンス詐欺で溢れている。

キャバクラやクラブなど女性が接客するお店は、“疑似恋愛”と割り切って楽しむお店だが、ガチで恋をしてしまう人は少なくない。随分入れあげてしまった知り合いもいた。たいして稼いでもないくせに、何百万もつぎ込んでいた。



傍から見ていると完全に騙されているのだが、こちらの話は聞きもしない。本人がすっかりハマっちゃっている以上、もうどうしょうもない。下手に忠告すると、「俺がモテるのに妬いてるんだな」みたいな、変な勘違いをされる場合もある。
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正直、そういう“ガチ恋男”は、空気が読めないタイプの人が多く、男性の間でも敬遠されている場合が多い。そもそもガチ恋男に真剣に忠告するどころか、応援するフリをして騙されるサマを楽しんでいる人もいた。

なので、たとえそんな男がかなり損をしても「まあ勉強代だと思いなよ」みたいな感じで済まされる場合が多い。



最近世間を騒がせた、「頂き女子りりちゃん」というSNSのアカウント名で活動していた女性は、毎月平均200万円をホストに貢献していたそうだ。つまり、平均200万円は男から金を回収していたということだ。被害者の男は女性を助けようと思ってお金をつぎ込んだわけで、ロマンス詐欺の一種だと言えるだろう。

結果的に、頂き女子りりちゃんは、名古屋地裁の一審で、懲役9年、罰金800万円の判決が出た(不服として名古屋高裁に控訴)。かなり重たい判決だが、男性3人から現金を騙し取ったのに加えて、詐欺の手法をまとめたマニュアルを販売したのがかなり悪質と捉えられたと聞いた。ちなみに、被害者の3人にはもちろんお金は返ってきていない。

でも「もっと上手くやれば逃げ切れるはず」と思うかもしれない。実際逃げ切っている人はたくさんいると思うが、かなりリスキーな行為である。

ガチ恋系の男がお金を取り戻そうとした結果……



2024年5月に西新宿のタワマンで、25歳のキャバ嬢が51歳の男に刺殺された。凶器は2本の果物ナイフで、首、腹など数十カ所を刺された。1本のナイフは刃が折れていたという。

理由は、「ガールズバーを応援するために出した1000万円以上の金を返してもらうため」で、犯人は「付き合っているつもり」になっていたらしいから、これもロマンス詐欺の一種と言えそうだ。

犯人は、愛用のバイクと自動車を売ってお金を作ったという。SNSでは、「犯人がかわいそう」みたいな声が上がっていた。



僕は犯人を全然かわいそうだとは思わないし、25歳の若い身空でめった刺しにされた被害者女性のほうが絶対的にかわいそうだ。しかし、お金さえ絡まなければ起きなかった悲劇ではある。

騙しやすいガチ恋系の男から金を取るのはちょろいかもしれないが、騙されたと気づいたときに「恨みの塊」になってしまうこともある。どれだけ上手くやって稼いだって、死んでしまっては意味がない。

「恋は盲目」とは良く言うものだけど、沼にハマらないよう皆さん気を付けましょうね。

▶︎村田らむさんのYouTubeチャンネルはこちら!

村田らむ=文・写真 池田裕美=編集

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