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「有輝が引き継いで、本当に喜んでると思う」



ボディもヘッドライトもエンブレムも、なにもかもが丸いフィアット 500だが、外観だけではなく、内装のほうも驚くほど丸い。

ありとあらゆるパーツが丸い。

ありとあらゆるパーツが丸い。


各種スイッチやメーターパネルは当然のように丸形。インパネの各パーツにも角はなく、徹底して曲線にこだわっているのがわかる。このイタリアらしい洗練されたデザインは父・恭一さんのお気に入りでもあったという。

センターコンソールもすべて丸い。 

センターコンソールもすべて丸い。 


ヘッドレストも丸い。

ヘッドレストも丸い。


有輝
「納車されたばかりの頃、親父に誘われてドライブに行ったことがあるんです。『どうだ。車の中、いいだろ?』って内装を自慢されました。確かにカッコいいなって。 
 
僕的には特に、このシフトレバーが気に入ってます。この車ってオートマとマニュアルがモードで切り替えられるんですよ。ガッコン、ガッコンってレバーを動かせたらカッコいいですよね。

まぁ、僕の免許はオートマ限定だから無理なんですけど」。

スピーカーも丸い。

スピーカーも丸い。


父が歴代乗ってきた車はコンパクトカーばかりだった、と兄弟は振り返る。 

卓也「覚えてるのはテラノ、オペル、BM、日産ノート、ミニクーパー……。恭一は体が大きくなかったから、小ぶりの車種が多かったよな」。
 
有輝「そう。親父はルパンも好きだったし」。 
 
卓也「僕ら兄弟は特に車好きっていうわけじゃないんです。でも、父といえば車、っていうくらい大の車好きでした。本当にいろんなところに連れていってくれましたね」。



有輝「だから、俺と卓也が自分の車を買ったことが、親父は一番うれしかったらしいよ。『おお、ついに息子たちも自分の車を買えるようになったか!』って。お経をあげてくれた住職が言ってた」。

卓也「有輝がフィアットを引き継いでくれて、本当に喜んでると思うよ」。
 

 
その後、ふたりはそれぞれの愛車に乗り込み、父・恭一さんのお墓参りへと向かった。ロケ地からほど近い鎌倉に眠っているという。

15年間、一途に一台の車を想い続けてきた卓也さんと、愛車を手放して父の形見を受け継いだ有輝さん。

彼らは東京・日本橋の出身。スタイルは違えど、これが下町の“粋”というやつなのかもしれない。



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佐藤ゆたか=写真 ぎぎまき=文

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