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2024.07.30

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大阪・関西万博プロデューサー・小橋賢児が語る「SDGs」への思い。楽しみながら地球に優しくできること



「The BLUEKEEPERS Project」とは……

小橋賢児さん、井植美奈子さんが海を守る活動を始めた10年前に比べ、今では多くの人が地球環境の「持続可能性」を考えるようになった。国連が持続可能な未来に向けての活動目標「SDGs」を掲げたのも大きな契機となった。

日本では来年、「大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)」が開催予定で、SDGsの目標達成に大きく貢献することを目指している。

万博に催事企画プロデューサーとして携わる小橋さんに、今の思いを聞いた。

【写真5点】「大阪・関西万博プロデューサー・小橋賢児が語る『SDGs』への思い」

お話を聞いたのは……
井植美奈子さん
ディビッド・ロックフェラーJr.が米国で設立した海洋環境保護NGO[Sailors for the Sea]のアフィリエイトとして独立した日本法人「一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局」を設立。水産資源の持続可能な消費をめざす「ブルーシーフードガイド」、マリンスポーツの環境基準「クリーンレガッタ」等のプログラムの開発と運営を手掛ける。京都大学博士(地球環境学)・東京大学大気海洋研究所 特任研究員。総合地球環境学研究所 特任准教授。OCEANS SDGsコンテンツアドバイザー。
小橋賢児 さん
クリエイティブディレクター。1979年、東京都生まれ。88年に俳優としてデビュー、数多くの人気ドラマに出演。2007年に芸能活動を休止し世界中を旅する。帰国後『ULTRA JAPAN』のクリエイティブディレクターや『STAR ISLAND』の総合プロデューサーを歴任し国内外で成功させる。ドローンを使用した夜空のスペクタクルショー『CONTACT』はJACE イベントアワードにて最優秀賞の経済産業大臣賞を受賞。2021年、東京2020パラリンピック競技大会閉会式のショーディレクターを務め、また、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の催事企画プロデューサーに就任する。その他、地方創生、都市開発に携わるなど常に時代に新しい価値を提供し続けている。

井植 私たちが活動を始めた2011年頃は、まだ持続可能性という単語自体もありませんでしたね。

小橋 確かに。それを考えると、10年でこれだけ進歩したとも感じますね。

井植 小橋さんは、2020年のパラリンピックの閉会式を短期間でまとめ上げられて、いまは大阪・関西万博の催事企画プロデューサーを務めていらっしゃいますよね。万博といえば国をあげての一大イベントですが、その中での持続可能性について、どうご覧になっていますか?



小橋 宇宙飛行士・毛利 守さんの「その一歩が未来を動かす」という言葉が、大阪・関西万博の催事テーマです。「混沌とした時代だからこそ、個がそれぞれに一歩を踏み出すことが改めて大事」という意味が込められています。

国、企業、自治体、個人、本当にいろんな人たちが一歩を踏み出すチャレンジをして、184日の会期を盛り上げるのが万博です。作る側が作って終わりではなく、来場する人々がそれぞれに気付きを得て、何らかの化学反応を起こしながら、次の一歩を踏み出していく機会となればいいと思っています。



井植 自分の中のスタンダードが変わるきっかけとなる体験ができるといいですね、未来を担う子供たちにとっては特に。

小橋 はい。踏み出された一歩ずつの連鎖が、いつか振り返ったときに「万博から始まっていたよね」と言えるような未来へとつながっていくことを願っています。万博は会場の中だけじゃない。見えないところでも、万博に向けて動いている人が日本中、世界各地にたくさんいます。

井植 万博の組織委員会の中には、持続可能性に配慮する調達コードを作る部署というのもありますよね。私はそこに少し関わっていて、意見を聞いていただいています。2021年の東京オリンピックやパラリンピックから、皆さんすごく勉強していますし、この数年で大きく環境への意識が向上しています。

小橋 2021年はどんな感じだったのですか。

井植 2021年に開かれた東京大会のときも、ロンドン、リオに続いて「持続可能性に配慮した調達方針」が制定されました。しかし、結果として水産物の調達方針はロンドン大会の方針より後退し、多くの議論を呼んだのです。結果的にはサプライヤーの努力で調達した、水産物のほとんどがMSC認証を取得したサステナブルなものになりましたが、さまざまな課題が浮き彫りになりました。私たちはこの経験を活かしていけば良いのです。

今回の万博には、そのとき得た学びがしっかり反映されていると思います。水産庁の意向を取り入れた調達方針を取り入れつつ、そのうえで具体的に目指すべき理想的な持続可能性の指針(アスピレーショナルスタンダード)を策定したのです。

つまり、どういう未来に向かっていかなければいけないのかという目標、意識がしっかりしています。



小橋 考え続けることが大事ですよね。僕たちが未来の世代に何を受け渡せるのか、考えることをやめてはいけない。僕にはひとり息子がいて、エイトって言う名前なんですが、ふたつの意味を込めています。ひとつは無限大の「∞」、そしてその無限の可能性をクリ“エイト”してほしいという意味です。

井植 将来が楽しみですね。

小橋 本人もその意味を理解してきていて「自分の人生は自分でクリエイトするんだよね」って言っています。僕の会社が掲げているのも「全人類が自分自身の人生をクリエイトする」という同じミッションなんです。そのきっかけ作りをするのが僕の会社であり、仕事だと思って続けています。



井植 一貫していますね。先日ご招待いただいた小橋さんの誕生日パーティもとても面白かったです。一流のイベントプロデューサーが自分のためにプロデュースしたお誕生日だっていうのがわかる演出が随所に散りばめられていました。多国籍のあらゆる世代が集まるダイバーシティな空間で、華やかでありながら暖かなムードでした。

小橋 僕の役割は小橋という名の如く、小さい橋を架けることなんだなと、あるとき気付きました。

井植 全然小さくないですけどね。今日は改めて小橋さんの考えを知ることができて楽しかったです。またどこかでご一緒しましょう。


「未来の世代に何を受け渡せるのか、考えることをやめてはいけない」。楽しみながら地球に優しくする。小橋賢児さんは、みんなが笑顔になるエンタテインメントを通じて、持続可能な未来に向けて挑戦を続けていく。

笹井タカマサ=写真 合六美和=取材・文

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