「パテック フィリップ」のノーチラス。ジェラルド・ジェンタのデザインによる舷窓を模したベゼルや、自身の苗字につながる「水」にまつわる背景に惹かれ、「念願の一本」として入手。
水澗さんが所有する時計は、いわゆる「名品」に数えられるものが多いが、はたして「名品=損しない」という条件なのだろうか。
「必ずしもそうではなく、大切なのは、自分が惚れ込めるかどうか。“物買ってくる、自分買ってくる”。——これは、陶芸家の河井寛次郎が残した僕の好きな言葉。
モノ選びというのは、自己を形成する行為。誰かが決めた価値に乗るのではなく、自分でモノの背景を知り、ポジティブに、自発的に選ぶことが大事なんです」。
「カルティエ」のタンク ノルマル。オリジナルに近いとされるこのモデルは、静謐なデザインや数々の“タンキスト”たちを魅了した背景に惚れ込んで入手。
時刻を計る道具であり、身を飾るアクセサリーでもある腕時計は、まさに“自分のスタイル”を表現するのに相応しいアイテムだ。
「“東京タワー的”なセレクトが、結果的には損しないという持論がありまして(笑)。生まれた背景、タイムレスな造形美、電波発信の機能性。さまざまな背景と美観が奇跡的に融合したモノの代表が東京タワー。
僕が所有している腕時計って“東京タワー的”じゃないですか?(笑)」。
「ロレックス」のデイトジャスト。時計好きとなるきっかけとなったのが、父から受け継いだロレックス。その後自ら「エアキングRef.5500」を入手。「完成されたケースデザインはやはり別格です」。
これぞ水澗さん独自の価値観。誰もが憧れる名作時計も、このフィルターを通すと別物に見えてくる。我々もぜひこの感覚を養いたい。
OCEANS8月号「夏の買い物計画」から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック!