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パリ五輪出場を支えた、羽根田選手の欠かせない5つのモノ

1.「バイダ(VAJDA)」のカヌー

カヌー競技で欠かせないものといえば、やはりカヌー。羽根田選手は、スロバキアに留学していた20歳の頃から、10年以上「バイダ」のカヌーを愛用している。



「僕が使っているのは、すごく古いモデルです。ほとんどのカヌーは2年に1度ほどモデルチェンジされて、選手も新しいモデルに乗ります。でも、僕は14年ぐらい前のモデルにずっと乗っているんです。

先日、パリ五輪のために新しいカヌーをオーダーしたのですが、『その型はもう作っていない』と言われてしまって。ただ、『型自体は残っているから、細かな凹みや傷が出てしまうけど、それでもいいなら作る』と言ってくれて、お願いして作ってもらうことになりました」。



羽根田選手にとって唯一無二のカヌー。なぜ、そこまでこのモデルにこだわるのか。

「本来カヌーというのは、バランスを取るために平べったく、大きいものが多い。僕の場合は、比較的に体が小さく体重が軽いほうなので、細いカヌーがいいんです。

ただ、細いがゆえにバランスは非常に悪い。最初のうちは慣れなくて、何度もひっくり返ったりしたのですが、『これを克服した先には、どんなパフォーマンスが待っているんだろう』と。自分のやりがいのようになりました。

乗りこなせるようになると、機動性や俊敏性の高い、スピードの出るモデルなんですよ」。

とはいえ、カヌーは個体差があり、同じモデルであっても、微妙に乗り心地が変わるという。

「徐々に水分を含み始め、重くなる。扱い方によっては、逆に軽くなることも。乗っていくごとに、硬くなったり、柔らかくなったり、同じモデルでも全然違うんです。簡単に取っ替え引っ替えできるものではないので、最低3カ月以上、自分の体と一体に感じられるまで、じっくりと体を馴染ませていくんです」。



体を馴染ませやすいよう、オーダーメイドをする選手もいる。しかし、羽根田選手はクッションを切り貼りしたり、脚に合わせた座椅子を作ったり、座りやすいように自らカスタムしていくという。

「スラロームのカナディアンの場合は、カヌーの中にある約10cm四方の座椅子に正座をします。そこから脚を開き、カヌーの内側に押し付け、踏ん張ってバランスを取ります。

激流の中でバランスを取るというのは、すごく難しい。だから、自分の体に合わせて1から作っていくことが必要なんです」。

“自分のカヌー”に仕上げていくのには、選手それぞれの性格が出るそうだ。

「例えば、小学校時代の図工の時間を思い出してもらえるとわかりやすいと思います。すごくキレイにセッティングする選手もいれば、必要最低限のことしかやらない“雑”な選手もいる。僕の場合は、完全に後者ですね(笑)」。

羽根田選手も若い頃は試行錯誤して、こだわって作っていた。だが、年齢を重ねるうちに、最低限まで削ぎ落とそうと、開き直ったような気分になったという。

「セッティングだけじゃなく、“こだわるところ”っていっぱいあるなって思ったんです。技術だったり、大会へのメンタル的なことだったり。だから、セッティングだけに時間を取られている場合じゃないなと気づいたんです。今はいい意味で、要らないところを削ぎ落としていますね」。


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