「日常に潜む社会の闇」とは…… 買い取ったものを他者に売り渡す転売屋、俗にいう「転売ヤー」。犯罪行為にあたるものばかりではないが、消費者も企業も被害を受けている。
ルポライターの村田らむさんは「転売された商品は買う気になれない」という。その驚きべき理由とは……?
案内人はこの方! 村田らむ●1972年生まれ。ライター、イラストレーター、漫画家。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海など、アンダーグラウンドな場所への潜入取材を得意としている。キャリアは20年超え、著書も多数。自身のYouTubeチャンネル「リアル現場主義!!」でも潜入取材や社会のリアルを紹介している。
「転売行為」で有罪判決を下されることも
「転売ヤー」とは、買ったものを売って収益を稼いでいる人たちのことだ。転売行為のすべてが犯罪行為というわけではないのだが、それでも転売によって被害を被る人や企業は多い。
転売ヤーが買い占めることで消費者も商品を買いづらくなるし、値段が吊り上がるので、非常に嫌がられる。人気のゲーム機やプラモデル、品切れになってしまった商品などが狙われやすく、実際に手に入りづらくなって、イラッとした経験がある人は多いだろう。
仕事でフリーランスに対してインタビューする機会があるが、「フリーの仕事だけでは食べられないので、転売で稼いでいます」とか言われると「あちゃー」という気持ちになる。記事に書いたら、読者からは反感を買うこと間違いない。
とはいえ、転売行為は昔から行われてきていた。古本業界では、古書店で安く売られている本を買ってきて、それを他の書店で高く売って利ざやを稼ぐ行為「せどり」が昔からある。
特に嫌われているという印象はない。僕の処女作である『こじき大百科』は、発売してすぐにある労働団体に叩かれて絶版回収騒動になってしまった。そのため、古本が高騰し一時は2万円を超えていた。
せどりをしている人に、「いやあ『こじき大百科』を見つけたら即買いですよ。たまにブックオフとかで安く出てるときがあるんです」とニコニコ顔で言われたことがあるが、古本がいくらになろうが僕には1円も入ってこないので、うれしくなかった。
人気のあるコンサートなどの転売も昔からある。昔はダフ屋という悪そうなお兄さんが会場の周りに立って、「チケット買うよ、チケット買うよ」「チケットあるよ、チケットあるよ」と呟いていた。
転売用のチケットを買うための行列には、上野公園などから拾ってきたホームレスに並ばせてもいた。
コンサートチケットに関しては、今はとても厳重な対応をする場合が多く、転売で買ったチケットでは会場に入れないケースも多い。2017年には、チケットを高額転売した男が詐欺罪に問われ、懲役2年6月、執行猶予4年という有罪判決が出た。
チケット転売で儲かるお金は数万~数十万円で、前科者になるのはバカバカしい。売らないのはもちろんだが、資金源にならないように転売業者から買わないようにするのも大事である。
と言いつつ実は僕は、何でも屋でバイトしながらネタを集めていたときに、転売ヤーの手伝いをしたことがあった。
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