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4輪駆動と見紛う走り

まずはクルマの基本特性を知るため、時速60kmのスラローム走行でHEVのノーマルモードとガソリン車を比べた。

HEVは重量が少し重いが、グイグイっと曲がり踏ん張りが良く、実に扱いやすい。これはバッテリーパックを前席下に置き、最低地上高を205mmとガソリン車と同じにしながら、重心の高さを10mm下げたことや、車体床部にサイドメンバーとクロスメンバーを追加したことで車体剛性が上がった効果だ。

ターマックモードでスラローム走行をすると、ステアリングのガッシリ感としっかり感が増し、さらにAYCの作動によりMPVとは思えないスポーティな動きをする。

次に、散水車を使った定常旋回を時速50〜60kmで試した。ノーマルモードでも決してアンダーステアが強すぎる印象はない。

ウェット路面で定常旋回するエクスパンダーHEV(写真:三菱自動車工業)

ウェット路面で定常旋回するエクスパンダーHEV(写真:三菱自動車工業)


さらにウェットモードにすると、トラクションコントロールが強まると同時にAYCが効果を出し、ステアリングはターマックと同じガッシリ・しっかりしたものに。またウェットモードでは、アクセルレスポンスが緩やかになっていることに気づく。だから、安心感があるのにけっこうなハイペースで走れるのだ。

今回はダート路面での走行はなかったが、マッドモードやグラベルモードになれば、さらに4輪駆動と見紛うようなクルマの前後バランスの良さや、旋回性の良さを実感できることだろう。

エクスパンダーHEVは、こうしたハイブリッド技術と7つの走行モードを持ったうえで、タイでは「e:motion(イーモーション)」と名付けたマーケティング戦略を打ち出されている。

FFでテレインモードを装着する三菱車としては、2023年8月にインドネシアでワールドプレミアした新型「エクスフォース」が先行していた。

新たな「ダイナミックシールド」デザインが採用されるエクスフォース(写真:三菱自動車工業)

新たな「ダイナミックシールド」デザインが採用されるエクスフォース(写真:三菱自動車工業)


こちらは全長4390mm×全幅1810mm×全高1660mmと、トヨタ「ヤリスクロス」やホンダ「WR-V」クラスのコンパクトなSUVで、「ノーマル」「ウェット」「グラベル」「マッド」、4つの走行モードを持つ。

今回は試乗できなかったが、エクスパンダーHEVとともに、日本のユーザーが大いに気になる三菱の最新モデルである。

話をエクスパンダーHEV試乗に戻そう。次は、通称「フィーリング路」での走行だ。

フィーリング路は、荒れたアスファルト路、ひび割れたコンクリート路、マンホールによるギャップがある路面、石畳など、世界に存在する12種類の路面を模したテストコースで、ここを走るとエクスパンダーHEVの素性の良さを強く感じる。

フィーリング路を走るエクスパンダークロスHEV。荒れた路面状況にも注目(写真:三菱自動車工業)

フィーリング路を走るエクスパンダークロスHEV。荒れた路面状況にも注目(写真:三菱自動車工業)


車体剛性が高く、またショックアブソーバーのセッティングやブッシュ類の変更、そして外部からの音の侵入を防ぐ部材の措置など、いわゆるNVH(音・振動・路面からの突き上げ)性能の高さがわかるのだ。

その他、全長1.5kmの周回路を直線で時速100km、コーナーで時速60〜70kmをノーマルモードで走行。ロングドライブにも十分、適合していることを確認できた。

気象状況が頻繁に大きく変わり、それにともなう走行環境の変化にフレキシブルに対応することが必須である東南アジアにおいて、エクスパンダーHEVは、安心した日常生活を送るための良き相棒なのだと思う。


4/5

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