パジェロやランエボで培った技術
テストコースの気温は35℃、さらに路面からの照り返しが強い。試乗の目的は、2024年2月に発売されたエクスパンダーHEVの実力を見極めること。そのため、さまざまな走行条件で、ガソリン仕様車と乗り比べた。
エクスパンダーHEV(タイ仕様)のボディ寸法は、全長4595mm×全幅1750mm×全高1750mm(ホイールベース2775mm)で、3列シートを持つ前輪駆動車(FF)だ。
なお、エクスパンダーにはアウトドア志向の「エクスパンダークロス」もあり、「エクスパンダークロスHEV」も今回、試乗することができた。
車高が上がり樹脂のクラッディングが装着されるエクスパンダークロスHEV(写真:三菱自動車工業)
エンジンは、ガソリンモデルが搭載する直列4気筒1.6リッターMIVEC(4A91型)をベースに新設計した、HEV専用の4A92型(最高出力70kW/最大トルク134Nm)。
ここに先代(タイでは現行車)「アウトランダーPHEV」用フロントモーター(85kW/255Nm)、インバーター、ジェネレーターを流用したハイブリッドシステムを搭載する。駆動用バッテリーはHEV専用のリチウムイオン電池で、電気容量は1.1kWhだ。
このハイブリッドシステムの最大の特徴は、「7つのドライブモード」があること。トライトンのようにトランスファーを持つ4輪駆動ではない前輪駆動車なのだが、トライトンと同様に、「パジェロ」や「ランサーエボリューション」で培った走行制御技術を応用するシステムを搭載している。
基本の2モードは、EV走行となる「EVプライオリティ」モードと、強制的にエンジンを動かし、ジェネレーターで発電した電力をバッテリーへ充電する「チャージ(回生)」モードだ。
注目は走行特性を変化させる5つのテレインモードで、「ノーマル」「ターマック」「ウェット」「マッド」「グラベル」がある。
こうした本格的なオフロード車向けのようなモード名を見ると、エクスパンダーHEVが4輪駆動車だと勘違いしてしまう人がいるかもしれない。
これら5つのモードでは、前輪のスリップを検知すると駆動力を制御する「トラクションコントロール」、前輪左右の駆動力と制動力を制御する「アクティブ・ヨー・コントロール(AYC)」、加速時のモーターやエンジンの出力を調整する「アクセルレスポンス」、速度域や路面状況に応じてステアリングの手応えを調整するステアリング制御、そしてシフトポジションを統合制御する。
エクスパンダーHEVのパワートレイン。バンコク国際モーターショーにて(筆者撮影)
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