ひと気のない場所を求めて辿り着いた奇跡の光景
駅前から西へ一直線に伸びる小高駅前通り。震災前はさまざまな店が立ち並び、多くの人で賑わっていた。
ブランド立ち上げ当初から、いずれは東北に拠点を置きたいと思っていたと語る平岡さん。そんな中、花火師の仕事で南相馬市の小高地区に訪れた。ここに強い魅力を感じたそう。
「新型コロナの影響で2020年、2021年と花火大会が相次ぎ中止になり、全国的に花火玉が余っている状況だったんですよ。全国の花火会社の皆さんが困っていたこともあり、何かしらアクションを起こしたいと思いましたが、“三密”を避けるために人口の多い首都圏で打ち上げるのは難しい。
そこで、福島のあまり人がいないところを目がけ、辿り着いたのが小高でした。準備のため1カ月くらい通っていたのですが、ほかの地域と違って小高だけは何も手が施されていないような状態であることに気づきました」。
JR常磐線小高駅。原発事故に伴う避難指示で5年あまり休止し、利用客の減少を理由に2020年3月からは駅員のいない無人駅に。
福島原子力発電所から20km圏内に位置する小高区は、避難指示の一部が解除されるまで5年4カ月、人が住めなかった地域だ。
長い年月を経ても何も変わっていない街の光景を目にした平岡さんが、ほかの東北の街にはない個性を感じ取ったとしても不思議ではないだろう。
「復興がまだまだ進んでいないことにショックを受けた反面、ここは自然が大切に残されている、これは奇跡だなと。海もあって、山もあって、全然違うその両方の景色が広がっている。自分が好きなヨーロッパのローカルの光景となんとなく重なって見えたんです」。
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