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自ら場所を開き、友好的なエイリアンを目指す

決して意図的ではなく、必要に駆られて始まった恵比寿と十日町市での二つの生活。2013年になると、開かれた場を持つ二つの拠点をどちらもホームとして行き来する生活を「ダブルローカル」と呼び始めます。

当時は住まいも拠点に近い中目黒でしたが、東京の東側にある後藤さんのご実家との行き来が増えたこともあり、2014年に恵比寿から拠点を移すことに。それが現在の〈gift_lab〉がある清澄白河でした。

「元々、東京都現代美術館が好きでよく行っていた街でしたが、〈山ノ家〉で知り合った方が清澄白河でギャラリーをやっていて、『興味があるなら街を案内するよ』と清澄白河を一緒に歩いている時に紹介されて出会ったのが清洲寮でした。

昭和8年築の集合住宅なんですが、昭和初期のモダンな姿が残っていて本当に魅力的で、建築好きならたまらない物件。自由に改装していいという寛容さにも、とても惹かれてしまいました。よくよく考えると魅力的な場所に出会ってしまうことが、いつも自分たちの活動の拠点の始まりになっているんですよね」(池田さん)

2014年に、清洲寮の1階にオープンした〈gift_lab GARAGE〉。現在は、清澄白河内で〈gift_lab〉としてオープンしている

2014年に、清洲寮の1階にオープンした〈gift_lab GARAGE〉。現在は、清澄白河内で〈gift_lab〉としてオープンしている


〈gift_lab GARAGE〉では音楽のイベントも開催された

〈gift_lab GARAGE〉では音楽のイベントも開催された


恵比寿時代の倍の広さでかつて車庫だったこの場所に、これまでの〈gift_〉のオープンなオフィスに多目的なギャラリースペースやカフェといった新たな機能も加え、より開かれた場所となった〈gift_lab GARAGE〉。この自ら場所を開くことが、地域や代々そこで暮らす人たちと日常的に関係性を築くために大切だと二人は言います。

「実はとても引っ込み思案で、飲み会やパーティーなどに出ていくのが得意じゃないので来ていただく方がありがたい。だからこそ自分でつくった拠点では、開くことを大事にしていて。来てくれた人とは全力で会話したいし、その人たちを全力でもてなしたいんです。

それは十日町市でもそう。私たちは都市からやって来たよそ者だし、現地の人たちからしたらわけのわからないエイリアンなわけです。その土地に代々住んでいるわけじゃないので、簡単にわかり合えないのは当たり前ですよね。だから自ら場所を開き、友好的なエイリアンであることを示したいなって」(池田さん)

自ら場所を開くことは、新たな出会いや創造を引き寄せることになったとも。

「初対面で面白いと思ったら『一緒にやりましょう』と声をかけ、予期せぬプロジェクトが発火することが多々ありました。自ら場所を開いたことで人との出会いが増えて、自分自身が多面体になっていったんです。自分の新たな一面にも出会いつつ、いろいろな人と面白いチャレンジをするようになりましたね」
 
2021年には、二人が敬愛するアーティスト・宮島達男さんと共催の展示イベントも開催した

2021年には、二人が敬愛するアーティスト・宮島達男さんと共催の展示イベントも開催した


 これまでインテリアや空間のデザインをしてきた後藤さんと池田さん。二つの拠点ではカフェや宿泊施設と、今までと異なるなりわいを営んでいるように見えますが、それらはシームレスにつながっているよう。

「僕たちはつくった空間ができたその先まで考えたいんです。空間をデザインして終わりではなく、さらに心地いい空間にしていくために、どんな音が響いているのか、どんな光が入ってくるのか、どんな物が置かれているのか、どんな人が集って何が生まれていくのか。

手がけた空間で音楽が必要であればセレクトもする。絵や雑貨も選ぶ。空間は器を作って終わりじゃない。むしろ、そこからが始まり。だから、自分たちでデザインした空間には、できるだけ深く多層的に関わっていたいんです」(後藤さん)




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