乾燥機・アイロンで衣類についた卵を駆除!
――帰宅後の注意ポイントについても教えてください。 トランクを開けて、トコジラミの成虫がいないかよくチェックしましょう。厄介なのは成虫だけでなく、肉眼では見つけにくい1mm程度の大きさの幼虫や卵です。
特に卵は水洗いだけでは駆除できないので、衣類は洗濯後に乾燥機(50〜60度)の使用をおすすめします。乾燥機がない場合は、アイロンがけでも卵の駆除の効果は期待できます。
――もしトコジラミが家で発生した場合の対処方法は? トコジラミの成虫や血糞を見つけたら、被害を拡大させないために早急に対処することが大切なので、保健所もしくは全国にあるペストコントロール協会などに相談しましょう。
トコジラミの成虫や幼虫、卵は隙間の奥深くに隠れていて素人では見つけることが難しく、特に増殖すると家庭で全てを駆除することが困難な害虫だからです。
――市販の薬剤で処置するのは難しいんですか? 初期であれば応急処置として、ホームセンターや薬局などで販売されているトコジラミを対象としている薬剤を散布することで防除が可能です。
ただし、前にも述べたようにピレスロイド系の殺虫成分を使用している商品については注意が必要です。国内でもこの殺虫剤に抵抗性を持った「スーパートコジラミ」と呼ばれる個体が見つかっているため、駆除が困難になる場合があるからです。
また、ピレスロイド系の殺虫成分は忌避効果もあるため、薬剤の処理が不十分だと、トコジラミが死ぬ前にほかの場所に拡散してしまうことがあるので注意しましょう。
できれば、使用する薬剤は「カーバメート系(プロポクスル)」や「メトキサジアゾン」を使用した商品を選ぶといいのですが、これらの成分を単体で使用している商品が少ないのが現状です。
――害虫駆除といえばバルサンなどの燻煙剤ですが、この効果は? 効果がある薬剤もあります。よく燻煙剤でトコジラミの駆除が難しいとのネット情報を見かけますが、これはトコジラミが狭い隙間に潜んでおり、吸血した個体はなかなか出てこないこともあるので、1回の燻煙での駆除は難しいということだと思います。
大量に発生し急激に生息数を減らしたい場合に燻煙剤を使用するのもいいかもしれませんが、大抵の燻煙剤にピレスロイドが入っている場合が多いので、前述のようにトコジラミの拡散のリスクがあります。
最近、トコジラミの忌避が無く、拡散の心配がないテネベナール(ブロフラニリド)という新しい成分を使用した燻煙剤が発売されたので、ピレスロイド系殺虫成分に抵抗性を持った個体に対しても効果を期待できます。
市販品は、きちんと厚生労働省認可の試験を経て効果が確認されているので有効とはいえ、使い方によっては駆除がうまくいかないことがあるのも事実です。やはり、まず専門業者に相談するのが一番かと思います。
――トコジラミの駆除はいくらくらいかかるの? トコジラミの駆除の値段については、その被害状況(生息状況)や施工する範囲、施工回数などによって大きく変わります。このため一概に金額を示すことはできませんが、10万〜30万円、場合によってはそれ以上となることもあります。
また、トコジラミは奥深く隠れているので一度に駆除できない可能性があります。数週間後に再度点検して必要な場合は、再度薬剤を散布する必要があります。
業者によって、複数回契約の場合もあれば、単発契約中心で状況に応じて追加料金が必要になることもあります。
決して安価ではないので、保健所やペストコントロール協会で紹介された業者のいくつかに、追加料金なども含めた見積りをお願いするとよいでしょう。
――トコジラミについてよく理解できました。そのほかに実施すべき予防策は? 最初に話したように、トコジラミはどこにでもいるわけではないので、旅行に行ったからといって「持ち帰っているのではないか……」などと、あまり神経質になる必要はないと思います。
ただ、増えているのも事実ですから、旅を楽しむためにもトコジラミがどんな害虫なのかを知ること、そして対策を準備しておくことが予防の第一歩になるのではないでしょうか。
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トコジラミを自宅に持ち込まないために、旅行前に今回の注意ポイントを参考にしてみてほしい。