「よろしくお願いいたします」。
こちらはScaleX代表の松尾亜紀さん。起業した経緯については後述するが、彼女が生まれ育ったのは福岡県南部のみやま市。どんな街ですか?
「畑と田んぼばかりで穏やかなところです。あ、山の上に建っている清水寺は桜と紅葉の名所で、家族や友だちとよく行っていました」。
約1200年前に開山した天台宗の古刹。
小学生の頃は習字、ピアノ、公文、料理教室などの習い事をしていた。
「料理教室は地域の食材を使ったメニューを作るというものです。料理は家でもお母さんと一緒に作っていて、大好きだったのは福岡の郷土料理のだご汁。何杯もお代わりしていました」。
小学3年生のときの作品。
中学はブラスバンド、高校はバドミントン部に所属した。
「ブラスバンドは部長で、パートはコントラバス。自分が上手くないと部員がついてこないので、誰よりも朝早く行って練習していました。バドミントンは最初マネージャーとして入部したんですが、途中から選手になりました」。
高校3年生の夏、県大会に出場したときの写真。
今でも忘れられないのは修学旅行で訪れた気仙沼だという。
「被災地の瓦礫を片付けるというボランティア活動で、震災はテレビの中の世界だったので、『ああ、本当に起きたことなんだ』と実感しました。今の幸せを再確認させてくれるきっかけになった体験ですね」。
ボランティア中に地元の人からもらった柿とともに。
高校卒業後は福岡県内の大学の看護学科に進学。アパレル店でアルバイトをしながら、バンド活動に励む。
「バンドはガチでやっていました。私はドラム担当で、今でも福岡に帰るとスタジオを借りて練習したり、大学の先輩や友達とライブをしたりしています」。
ライブでドラムを叩く亜紀さん。
また、福岡にはお気に入りのスポットもあるそうだ。
「六本松エリアにある小さい本屋さんで、店主はフランス人の男性。店内には壁一面にフランスや日本文化の本が並んでいて、その空間にいるだけでワクワクします。私にとっては秘密基地のような場所ですね」。
2020年にオープンしたブックカフェ「Nautilus(ノティリュス)」。
大学卒業後は大学附属の病院で看護師として働いたが、副業でYouTube動画を作ったり、きれいな景色を撮って編集してウェブにアップしたりしていた。
やがて、動画を使ったマーケティングビジネスに興味が出てきて、東京のマーケティング会社に転職した。
「環境をガラッと変えて新しいことにチャレンジしたいタイミングだったので、洋服も家具もほぼ全部捨てて上京したんです。主な仕事内容はSEOと広告運用。そこで半年ぐらい働いたのち、今年の1月に起業しました」。
25歳の決断だ。
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