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2024.04.07

ライフ

「魚」もトレーサビリティで選ぶ時代到来。2024年、どんな魚を食べようか?



「The BLUEKEEPERS project」とは……

一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局の理事長であり、OCEANS SDGsコンテンツアドバイザーとして、海洋環境保護に取り組む井植美奈子さんと漁業政策の改革を進める、衆議院議員・小林史明さん。彼らの対談から「海を守る」ことについて、自分ができることの解像度が高まってきた。

最終回となる今回は、いちばん身近な「食べる」ことについての話だ。

お話を聞いたのは……
井植美奈子さん
ディビッド・ロックフェラーJr.が米国で設立した海洋環境保護NGO[Sailors for the Sea]のアフィリエイトとして独立した日本法人「一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局」を設立。水産資源の持続可能な消費をめざす「ブルーシーフードガイド」、マリンスポーツの環境基準「クリーンレガッタ」等のプログラムの開発と運営を手掛ける。京都大学博士(地球環境学)・東京大学大気海洋研究所 特任研究員。OCEANS SDGsコンテンツアドバイザー。
小林史明さん
衆議院議員。 「テクノロジーの社会実装で、多様でフェアな社会を実現する」を政治信条に規制改革に注力。行財政改革、労働市場改革、デジタル規制改革、放送・通信改革等に取り組む。現在は経済構造改革、スタートアップ政策、社会保障制度改革を中心に、競争政策、党改革も推進している。第1-2次岸田内閣でデジタル副大臣兼内閣府副大臣を務め、デジタル臨時行政調査会を創設。見直すべきアナログ規制の調査を行い、一括法改正に向けた計画を提言した。菅内閣府では内閣府大臣補佐官として、ワクチン接種促進事業を統括、VRSの開発・運用をリードした。広島県福山市出身。

海を守るために、魚の“トレーサビリティ”を整えたい



井植美奈子(以下、井植) 小林さんはデジタル副大臣(2021〜22年)にも就任なさって、デジタル化の推進をリードなさっています。海の問題に関しても、現場にかかっている負荷をデジタルで解決していかなくてはいけない。その辺のことを少し、教えていただけますでしょうか。

小林史明(以下、小林) DX(デジタルトランスフォーメーション)とよく言われていますけれど、海に関して注力すべきは、魚のトレーサビリティですね。この制度を整えることが重要だと考えています。

井植 具体的には?

小林 3つあって、ひとつは、違法漁業によって漁獲されたものを流通させない。ふたつ目は、魚の獲りすぎを防ぐべく、どの漁船が何トン魚を獲ったのかを明確に記録する。3つ目は、どの漁船・漁師さんが獲った魚なのかがわかるようにする。この3つの観点から、トレーサビリティはとても大事。

井植 今はどんな段階でしょうか。

小林 何か設備投資しよう、デジタルで何かをやろうとなっても、漁業政策は基本的に都道府県ごとに行われているので、ここがまず乗り越えなくてはいけないポイントだと思っています。つまり流通の情報を一元的にトレースして、消費者まで届ける方法の確立です。アナログな手段で進めるのはものすごい負担ですし、誰もやりたくない。そこにデジタルが生きてきます。

井植 ひとつの仕組みを国が用意するということですね。



小林 そのとおりです。人口が増えていた時代は、現場それぞれでやった方が良かったのかもしれない。けれども技術が進展した今、そしてこれからの時代に効率良くするためには、国が責任を持ってクラウドベースの一元的なサービスを提供するということをやりたい。そしてすべての利用者に使っていただけるように転換していきたい。人口が減少している今の日本がトランスフォーメーションしなければいけない形だと思っています。

井植 大賛成です。令和の今、社会の仕組みが昭和のままでは、お互いに反発してしまうようなところがあって、適用しようにもできませんから。

小林 インフラは古くなりますからね。道路、橋、港などのいわゆるハード面はもちろん、ソフト面のインフラも肝心なんです。時代に合った、なおかつ将来にも耐えうるものにトランスフォームするのが、私の大事なミッションだと思っています。

井植 あと、今までアカデミアはアカデミアのことを、政治は政治のことを、商売は商売で、とバラバラな動き方をしていたところも、これからは複合的なひとつのゴールに向かって、みんながそれぞれの役割をはたしていくこともトランスフォームだと思いますね。

小林 井植さんは、分野の垣根を越えていくために、どうしたらいいと思いますか?



井植 本当にちょっとしたことかもしれないですが、例えば私は小林さんのことを小林さん、史明さん、と呼んでいて、小林先生とは言わない。特別な存在としてお互いを扱うのではなく、一緒に同じものに向かって取り組んでいる仲間ですから。そういうコミュニケーションから始めることが、私は意外と重要なんじゃないかなと思ったりしています。

小林 すごくわかります。実際、僕は小林先生と呼ばれるたび「やめてください」と言っています。先生と言われた瞬間、お互いに距離ができちゃう感じがするので。一緒にみんなで楽しく体験すること。それが一番大事かもしれませんね。


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