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2024.04.06

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無人島でゴミ拾いして、みんなでバーベキュー。海がもたらすダイバーシティの醍醐味と持続可能性

写真=小林さん提供。

海浜の清掃活動の様子。/写真は小林さん提供。


「The BLUEKEEPERS project」とは……

海洋保全をめぐる海外の事例を日本向けにアレンジし、普及活動に邁進する、OCEANS SDGsコンテンツアドバイザー井植美奈子さんと、数々の漁業規制改革を引っ張る衆議員議員の小林史明さんによる対談企画の第3回。

小林さんは、地域を良くするには、3つの「D」、Digital(デジタル)、Design(デザイン)、Diversity(ダイバーシティ)がキーワードだという。さらに、毎年夏、地元・福山市の宇治島でのある体験を通じて「ダイバーシティ」の重要さを感じている。

お話を聞いたのは……
井植美奈子さん
ディビッド・ロックフェラーJr.が米国で設立した海洋環境保護NGO[Sailors for the Sea]のアフィリエイトとして独立した日本法人「一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局」を設立。水産資源の持続可能な消費をめざす「ブルーシーフードガイド」、マリンスポーツの環境基準「クリーンレガッタ」等のプログラムの開発と運営を手掛ける。京都大学博士(地球環境学)・東京大学大気海洋研究所 特任研究員。OCEANS SDGsコンテンツアドバイザー。
小林史明さん
衆議院議員。「テクノロジーの社会実装で、多様でフェアな社会を実現する」を政治信条に規制改革に注力。行財政改革、労働市場改革、デジタル規制改革、放送・通信改革等に取り組む。現在は経済構造改革、スタートアップ政策、社会保障制度改革を中心に、競争政策、党改革も推進している。第1-2次岸田内閣でデジタル副大臣兼内閣府副大臣を務め、デジタル臨時行政調査会を創設。見直すべきアナログ規制の調査を行い、一括法改正に向けた計画を提言した。菅内閣府では内閣府大臣補佐官として、ワクチン接種促進事業を統括、VRSの開発・運用をリードした。広島県福山市出身。
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小林史明(以下、小林)
 政治家になってからは、なかなか遊びに行く時間が取れないんですけど、それでも毎年楽しみにしていることがあって。

井植美奈子(以下、井植) なんでしょう。

小林 福山市にある無人島で、宇治島っていうところがありまして。

井植 瀬戸内ですね。

小林 はい。瀬戸内海にはたくさんの多様な島があるんですけども、その中でも宇治島は、地域の河川から流れてくるゴミが、潮の流れにのって漂着する場所になっています。毎年みんなで費用を出し合って、フェリーを借りて清掃に行っています。

広島県 福山市に属す宇治島。瀬戸内海に浮かぶ、数ある無人島のひとつだ。/写真=小林さん提供。

広島県 福山市に属す宇治島。瀬戸内海に浮かぶ、数ある無人島のひとつだ。/写真は小林さん提供。


井植
 いい取り組みですね、楽しそう。

小林 経営者や会社員、子供からおじいちゃんおばあちゃんまで100人以上で船で渡って、1時間ほど清掃をします。そのあとにみんなでバーベキューをして、海で遊んで帰ってくる。多様な人が集まって、みんなでワイワイ楽しみながら、海との関係をちょっと良くしている。楽しみながら行うことで、また来年もしたいねとなる。こういった活動は持続的でいいなと、僕自身も気付くわけです。

井植 そういう形でしたら、日本全国どこでも誰でも、自発的に楽しくできることですね。

小林 これまで12年政治家をやってきて、多くの人の意識を変えるのに最も強力な方法はやっぱり体験なんだなと思います。これからインバウンドで来日する方も増えるなか、観光を通して海の体験をいかに提供できるかというところに可能性を感じています。
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福山市の養殖牡蠣が、まだ市販される前、開発を行っていた頃の写真。

福山市の養殖牡蠣が市販される前に、開発を行っていた頃。/写真は小林さん提供。


井植
 漁業と観光を結びつけたら楽しいと前からお話ししてましたよね。小林さんの地元は、牡蠣の養殖も盛んだとか。

小林 そうなんです。もともと海苔の養殖が盛んな地域でして、一緒に牡蠣の養殖もやってみようと十数年前に提案したところから始まりました。実際、やってみたらすごくいいものができた。広島の牡蠣は垂下(スイカ)式という、イカダから海中にロープでぶら下げる方法がよく知られていますが、福山で採用しているのはシングルシードといって、牡蠣をケースに入れて育てるやり方です。生で食べられるように殻のきれいな牡蠣ができるので、東京から友達が来たら、漁船に一緒に乗って、その場で剥いて瀬戸内のレモンを絞って食べます。

牡蠣の養殖場で、牡蠣の剥き方を漁師さんに教わっている様子。

牡蠣の養殖場で、牡蠣の剥き方を漁師さんに教わっている様子。/写真は小林さん提供。


井植 牡蠣とレモン、どちらも瀬戸内産。

小林 これがめちゃくちゃ美味しいんです。あと、行き来する漁船の中での漁師さんとの会話も面白いんですよ。彼らは職人気質というか、最初は無口だったりするんですけど、実際に牡蠣を引き揚げて、一緒に食べて「美味しい!」とコミュニケーションをとるうちに打ち解けて、帰る頃には缶コーヒーを差し入れてくれたりして、すごく優しい方ばかりです。自分たちの仕事にも「特別な価値があるということに気付けたことがうれしかった」と、あとでその漁師さんと話した時におっしゃっていました。これもダイバーシティだと思うんです。

井植
 いい話です。地域の外から人が来てくれると、お互いに気付くことがありますね。
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毎年ゴールデンウィーク前後に開催される福山市 鞆の浦の鯛網。漁師さんたちに教わりながら地引網で鯛を獲る。

毎年ゴールデンウィーク前後に開催される福山市 鞆の浦の鯛網。漁師さんたちに教わりながら地引網で鯛を獲る。/写真は小林さん提供。


小林 新しい何かが生まれるきっかけは、人と人との交流にあると思います。今、地元の人たちと、海の真ん中に浮かんでいるイカダの上で、バーベキューをやってみようと話しています。漁師さんたちが獲った魚を入れておくいけすみたいなところがあるんです。ゆくゆくは海上レストランにできたら面白そうだなと。

井植 格好いい!

小林 もちろん、牡蠣だけでなく海苔も本当に美味しいんですよ。刈り獲った海苔でそのまま佃煮を作って、白いご飯にのせて食べる。美味しいから、お土産にも買って帰ったり。

井植 さらにお取り寄せでリピートしたり。

小林 そうそう。地域の人にとっては生業として所得が上がっていくし、いわゆる関係人口が増えていきます。ただ観光するだけではない、多様な関わりが生まれるというのはいいですね。


多様な人が集まって、海との関係をちょっと良くする。しかもそれが楽しいとなれば、持続的な活動となっていく。観光を通した海での体験、可能性は無限大だ。

笹井タカマサ=プロフィール写真 合六美和=取材・文

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