「The BLUEKEEPERS project」とは…… 2018年、70年ぶりに実現した日本の漁業法改正。それに続いて、水産流通適正化法(以下、流適法)が2022年に施行され、漁獲証明制度が始まった。それから2年が経った今年は、この漁獲証明制度の見直しの年。さらに多くの魚種をこの制度の対象にしていきたいのだとか。
魚の獲りすぎと新規参入の障壁の問題をクリアにしたその先に、 OCEANS SDGsコンテンツアドバイザー井植美奈子さんと、漁業法改正を成し遂げた衆議院議員・小林史明さんが考えることとは?
お話を聞いたのは…… | 井植美奈子さん ディビッド・ロックフェラーJr.が米国で設立した海洋環境保護NGO[Sailors for the Sea]のアフィリエイトとして独立した日本法人「一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局」を設立。水産資源の持続可能な消費をめざす「ブルーシーフードガイド」、マリンスポーツの環境基準「クリーンレガッタ」等のプログラムの開発と運営を手掛ける。京都大学博士(地球環境学)・東京大学大気海洋研究所 特任研究員。OCEANS SDGsコンテンツアドバイザー。 | | 小林史明さん 衆議院議員。「テクノロジーの社会実装で、多様でフェアな社会を実現する」を政治信条に規制改革に注力。行財政改革、労働市場改革、デジタル規制改革、放送・通信改革等に取り組む。現在は経済構造改革、スタートアップ政策、社会保障制度改革を中心に、競争政策、党改革も推進している。第1-2次岸田内閣でデジタル副大臣兼内閣府副大臣を務め、デジタル臨時行政調査会を創設。見直すべきアナログ規制の調査を行い、一括法改正に向けた計画を提言した。菅内閣府では内閣府大臣補佐官として、ワクチン接種促進事業を統括、VRSの開発・運用をリードした。広島県福山市出身。
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カギを握るのは消費者。「環境にやさしい」をファッショナブルに
井植美奈子(以下、井植) 2018年に70年ぶりとなる漁業法改正ができた。その2年後、流適法が成立して、施行されたのが2022年の12月ですよね。
小林史明(以下、小林) この改革で変わるのは、生業としている漁業者であり、流通事業者であり、さらにスーパーマーケットも含めて、最後に消費者の皆さんに届けるところまで。みんなの成功体験となるべき段階です。
井植 カギを握っているのは消費者ですね。自分の懐からお金を出すのは消費者ですから。美味しいか?楽しいか?さらに、未来につながるか?という価値観も加わるといいなと思っています。
小林 サステナブルな水産物の方が、少し割高であっても価値があると理解して選択をする。そんな行動につながるかどうか。井植さんは今年、どんな活動を考えていますか?
井植 美味しく、楽しく、地球にやさしく。これをファッショナブルにやろうというのを提唱したいと思っています。このオーシャンズでの対談連載もそのひとつで、ファッションやライフスタイルの話題とともに、届けていきたいです。
「サステナブルとファッションは相性がいい」と小林議員が明言する真意
広島県 福山市。/写真は小林さん提供。
小林 ちょっと話が逸れるかもしれませんが、ファッションでいくと、うちの地元はデニムの生産が日本一なんですよ。
井植 広島県 福山市。
小林 はい。いちばん有名なところで、「カイハラ」というデニム生地メーカーがあります。ちなみに今日、私はリーバイスをはいているんですけど、カイハラのデニム生地を使ったMADE IN JAPANコレクションのものです。
井植 小林さんのデニムスタイルってちょっと新鮮。いいですね。
小林 普段はデニムもよくはいています。デニムの製造工程は元来環境負荷が高く、カイハラさんは最新のシステムを導入して、染色後の排水を徹底的に浄化したり、製造工程で発生するクズをリサイクルしたりして、環境負荷をかなり低くしています。あと、福山市はバラのまちでもあって、このバラの枝を再生してデニムの生地にするという取り組みもやっているんです。
リーバイスの「MADE IN JAPAN」モデルにも、カイハラデニムが使われている。/写真は小林さん提供。
井植 枝の植物繊維から?
小林 はい。面白い取り組みですよね。一般消費者に近いファッションからサステナブルやサーキュラーエコノミーが実践されているのはいい傾向だなと思います。消費者の方々もそれを選ぶという行動変容が起きている。
井植 海とファッション。セットにできると面白くなりますね。
小林 ちなみに漁網などの海具も、海洋プラスチックの大きな原因と言われていまして。
井植 ゴーストギア※の問題ですね。
※投棄や紛失などで海に流出した漁具のこと。幽霊の如く、海に漂い続けることからこう呼ばれている。 マクアケ(Makuake)ローカル共創プログラム。不要になった漁網を用いてメッシュバッグを製作した。/出典=マクアケ サイトより
小林 うちの実家の日東製網は東レ、大洋エーアンドエフという漁業関係の事業者と一緒に、使用済みの漁網をもう一度再生して、再び漁網にする開発を進めています。
井植 リサイクルですね。
小林 はい。もう一度、網にする。それとはまた別の取り組みで、ビームスとのコラボで、日東製網で使用済みの漁網を再生してエコバックにしました。マクアケのクラウドファンディング形式でやったのですが、すごく売れた。それで実感しました、サステナブルとファッションは、すごく相性がいい。
井植 その火付け役が、
ナイキでしたよね。リサイクルのマテリアルから作っていくスニーカーに、次世代の関心が集まっていくのを肌で感じていました。
廃材で制作された、ナイキ「スペース ヒッピー コレクション」は過去にオーシャンズでも紹介。ナイキはサステナブルな取り組みを続ける、身近なブランドのひとつだ。
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