写真協力:尾上泰彦先生
▶︎すべての写真を見る 性感染症の中でも、2016年くらいから増加傾向にある梅毒。
コロナ禍で一時的に頭打ちになったものの、2021年から3年連続で増加するほど身近な性感染症になってきた。
そこで性感染症の権威、プライベートケアクリニック東京院長、尾上泰彦先生に梅毒の予防と対策、最新治療について話を聞いた。
聞いたのはこの人! 尾上泰彦先生●プライベートケアクリニック東京院長。泌尿器科医・医学博士。日本性感染症学会(功労委員)、財)性の健康医学財団(代議員)などを務めるなど日本の性感染症の予防治療を牽引している。クリニックで長年積み重ねてきた性感染症の専門医として診療にあたるほか、雑誌やWEBなどでさまざまな性感染症の情報を発信している。著書に『性感染症 プライベートゾーンの怖い病気』(角川新書)などがある。
20代女性、30〜50代男性に感染者が多い梅毒とは
出典:厚生労働省
――まず、梅毒はどんな病気なのでしょう? 梅毒は、性行為などによって梅毒トレポネーマと呼ばれる細菌に感染することによって引き起こされる病気です。3〜6週間の潜伏期間を経て発症します。
梅毒は、性感染症の中でも増加傾向にあり、男性の患者数は30〜50代の幅広い年代、女性は20代が突出して多いという特徴があります。都道府県別に見ると、東京都、大阪府、愛知県、北海道などが多いですが、人口が少ない地域でも増えつつある病気です。
――なぜ増えているのでしょう? 梅毒など性感染症の感染経路は、とてもプライベートなことなので調査することが難しいのが現状です。患者さんを診察していると、性風俗の従事者や利用者が多い傾向となっています。
そのほか、いわゆる「パパ活」や、出会い系のアプリ、売春などで不特定多数の人と性行為することも一因ではないかと考えられます。
また、海外は梅毒の患者数が日本と比べて多いことから、インバウンドで訪日外国人が増えたことも関係しているのではないかという指摘もあります。とはいえ、どちらも因果関係を証明するエビデンスはないのが現状です。
――梅毒の感染経路は? 梅毒は、性行為や性行為と類似する口腔性交(オーラルセックス)や肛門性交を通して、皮膚や粘膜の小さな傷口から細菌が侵入し感染します。相手の唇に病変があれば、キスで感染する可能性もあります。
またビタミン不足で性器の粘膜が弱っていたり、免疫が低下していたりすると、感染しやすいともいわれています。梅毒は免疫を得ることができないので、何度も感染する病気です。
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