ブランド経営者としてのキャリアアップ
「20代半ば頃、祖母が亡くなったり、母が体調を崩したりいろいろなことが重なったんです。
祖母は、僕が北海道の田舎から上京して美容師として働くことを、自慢に思ってくれていました。それが当時の僕の原動力になっていて、地元でも仕事を増やしていきたいという思いにつながりました。
タレントさんのヘアメイク業を始めたのもちょうどその頃で、祖母や家族に恩返しをすることを考えました。例えば、地元で美容室を展開するとか……。とはいえあまり現実的ではなく、じゃあ何があるかと考えたときに思いついたのが、北海道の素材を使った化粧品ブランドの展開だったのです」。
新たなことを始めるときはやる気に満ちているが、その半面不安な部分もある。そこは慎重に行ったと田中さんは続ける。
「ステップバックだけはしないように心がけていました。例えば、サロンでの美容師業からタレントさんのヘアメイク業に切り替わるタイミングのパワーバランスは9対1くらいだったのですが、徐々にシフトチェンジをするようにしました。
現在、年間契約100万円の会員制ビューティサロン、リノ 801を展開しているのも、売り上げや顧客の減少などネガティブな要素を減らすという意図があってのことなんです」。
サロン業とヘアメイク業に加え、2020年にはオリジナルのスキン&ヘアケアブランド、クロノシャルムの販売をスタート。北海道の地方創生を掲げ、余市町の白ブドウをキー成分に採用したプロダクトだ。
「“ゲストの大切な時間を守る”という思いから、商品を作る際に“時間”をコンセプトに掲げ、それに関連する美容成分を北海道で探していました。
最初はなかなか見つからなかったのですが、あるとき長野県のワイナリーのブドウの皮の成分に、有効なものがあるということがわかったんです。そのときに長野県にあるなら北海道にもあるのではという話になり、探したところ余市町のワイナリーで見つかったことから、廃棄されるブドウの皮を使った商品作りがスタートしました」。
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