漁獲量の9割以上を占める“未利用魚”
未利用魚の一例
香里武さんは海の異変に警鐘を鳴らしつつも、独自の対応策を提案する。
「サンゴの白化や磯焼け、漁獲量の減少、乱獲など、海で起きている問題を挙げればきりがありません。もとを辿れば地球温暖化につながるものばかりです。
こういった問題により、これからは好きなだけ好きな魚を食べることは難しくなるでしょうね。だから僕が提案したいのは、“未利用魚”にチャレンジしようということです」。
未利用魚とは文字通り、利用されていない(=食用になっていない)魚のこと。グロテスクな見た目で敬遠されたり、販売ルートがなかったり、理由はさまざまだが、実は我々が知らない魚が海には溢れているのだ。
未利用魚の一例
「いま、水揚げされた魚の3〜4割が、(食べられるのに)利用されずに捨てられている状況です。種類で見ても、日本近海には約4000種の魚がいますが、スーパーや飲食店で見かけるのはそのうちせいぜい20種程度でしょう。つまり、食用魚が偏っているんです」。
普段、食べている海水魚の名前を思い出してみてほしい。20種以上出てくるだろうか? 日本人は魚好きとはいえ、食べている魚の種類はごく一部なのだ。
「海には僕らが知らない魚だらけなんですよ。色んな温暖化対策がありますが、“食べたことのない魚を食べてみる”というのも、持続可能な水産資源を守るために大切だと考えています。
たとえば、深海魚の“のどぐろ”も少し前までは見向きもされない魚でした。でも、いまでは誰もが知る高級魚です。見た目がグロテスクでも、食べたら美味しい魚はまだまだいっぱいあるんですよ」。
香里武さんが足繁く通う漁港でも温暖化の影響は顕著だ。「最近は関東の漁港に、沖縄にいるような青や赤、黄色といった色鮮やかな熱帯魚が増えてます」。
“食べたことのない魚を食べる”なんて、お安い御用だと思うだろう。しかし、意識していなければ意外と難しい。その一例がこれだ。
「以前、北海道でブリの漁獲量が6倍に増えているのに、“値が付かない”というニュースを見ました。道民には、“食卓に出る魚”として馴染みがなかったからです。これが関東だったら、喜んで食べますよね」。
安いけど初めて見る魚とちょっと高くても食べ慣れた魚、同じように並んでいたらどちらを選ぶだろう?
「北海道では地元のベンチャー企業が、未利用魚のブランド化に尽力しているそうです。新しい魚を食べるという文化を根付かせるのは時間がかかる。でも逆に文化次第なところもあります。
だから、食べたことがない深海魚や熱帯魚にもチャレンジしてほしい。こだわりの魚屋に行けば、変わった魚に出会えますよ」。
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