言葉③アピールは成長のために必要。出会う人の数が増え、新しいことを知るチャンスも増える
Q:田中さんは全国を回り、ラグビーボールを子供たちに寄贈する活動をされていると聞きました。子供を指導する機会も多いと思うのですが、教える上で大切にしていることはありますか? 僕自身が一番大切にしている「楽しむ」ということはもちろんですが、僕が常に言っているのが「自分をアピールしてほしい」ということです。
僕に対してもそうですし、周りの仲間にもそうですし、アピールっていうのはこれから成長して生きていく上で必要になってくると思うんです。「自分を人に知ってもらうことで、人とのつながりも増えるし、自分というものを成長させてくれるんだよ」という言葉で伝えるようにしています。
Q:自分を出したり、1歩前に出ることが苦手な人は少なくないと思うのですが。 難しいですよね。 僕もすごく人見知りで、自分から喋るタイプではないんですけども、僕は「ラグビーのため」と思うと、どんな人でもどんな時でも、いろんなコミュニケーションは取るようにしていますね。
自分に何か1つ、「なぜしないといけないのか」「なぜした方がいいのか」というのを持っておくと良いかもしれないですね。難しいですけど、自分の中に、何か自分ルールみたいなものを持っておくといいのかなと思います。
Q:2011年のW杯で田中さんが感じた「罪滅ぼし」という思いから、日本代表は強くなり、世界からの目も大きく変わりました。日本ラグビーをけん引してきた立場として、次世代を担う後輩に思うこと、期待することはありますか? 少し厳しい言い方になりますが、勘違いしてるプレーヤーもいると思うんです。日本代表が南アフリカに勝ったり、アイルランドに勝ったり、W杯でベスト8になったりしていますが、1人1人の選手が本当に人生を賭けて、体を張って努力して、掴んだのが日本代表のそうした結果なんです。
並大抵の努力では絶対にその座は勝ち取れないんですよね。そこを勘違いせずに、努力してほしいですし、誰かのために、そして日本のために体を張ってブレイブブロッサムズを背負っていってほしいなと思いますね。
Q:最後に、今後の目標をお願いします。 目標というより、活動なのかも知れないですが、日本の皆さんにラグビーの素晴らしさを知っていただきたいですし、子供たちにラグビーを通して人生のあり方、スポーツの素晴らしさを伝えていきたいなと思います。
Q:田中さんにとって、ラグビーの魅力を教えてください。 誰でもヒーローになれることです。大きい人、背の高い人、僕みたいに小さい人、足が遅くても速くてもみんながトライも取れますし、スクラムがあったり、ラインアウトがあったり、キック、キックキャッチ、タックル。みんなが主役になれるスポーツなのかなと思います。
大人数のスポーツなので、仲間も一気に増えますし、23人、全部で46人いるんで一気に45人の仲間、ブラザーが増えるようなスポーツかなと思いますね。
田中史朗(たなか・ふみあき)1985年1月3日、京都市生まれ。中学1年の時にラグビーを始め、伏見工―京産大を経て三洋電機(現パナソニック)に加入。広い視野で1年目から活躍すると、08年に日本代表に初選出され、同年のアラビアンガルフ戦で初キャップを獲得。11年、15年、19年とW杯には3大会連続で出場した。日本代表キャップは75。13年にニュージーランドのハイランダーズと契約し、スーパーラグビーに日本人として初めて出場。15年に優勝を経験。19年にキヤノン移籍、21年からはNECでプレーしている。