中古市場を活用して多くのデザインを楽む
サーフボードビルダー 吉川拓哉さん●神奈川県横浜市生まれ。 千葉の外房にファクトリーを構え、 国内外で活躍するサーフボードビルダー。 サーフボードは自身のレーベルのほか、 「レイジー・ボーイ・スキル」や 「ミディアム・ザ・ブランド」などで ゲストシェーパーを務める一方、 「デウス・エクス・マキナ」から招待を受け、 2014年に⽇本⼈シェイパーとして初参画。 現在まで毎年モデルを発表してきた。
近年の物価上昇に伴いサーフボードの価格も上昇傾向にあるが、その状況に対しては「中古市場を活用するのがいい」と言う。
数多のデザインが生み出され、いろんな乗り味が楽しめる時代。理想はバリエーションの異なるデザインを所持することであり、それには中古市場を活用するのがいいというわけだ。
「昨今の中古市場はとても充実しています。“ちょっと乗って飽きたら売る”というサーファーが増えているんだと思います。僕もよく国内外のサイトとかをチェックしていますし、気になるボードに出合ったときには購入することもあります。
かつてはカスタムボードをオーダーすることが最善策だといわれたことがありました。でも今はもっとカジュアルで、もっと自由でいいと思うんです。そのほうが間違いなくサーフィンを楽しめますから」。
洋服ならセカンドハンドやヴィンテージに価値が見いだされるのは普通のこと。タッピーさんの話を聞くと、昨今のボード事情は同様の状況になってきたのだと思える。
もちろん現在も新品に価値はある。視点の持ちようでは中古ボードにも等しく価値を見いだせるということだ。それは選択肢が増えることを意味し、またそのような時代になった背景には、サーフィンのさまざまな楽しみ方に自覚的なサーファーが増えたためだといっていい。
一方、クオリティにおいて粗悪品が非常に少なくなったことも中古市場を支えていると言える。
「市場に流通しているサーフボードには一定のクオリティが備わっています。“これジャンクだな”と感じるものに出合うことは、ほぼありません。そのような状況になった理由のひとつには、デザインに関する情報のオープン化があります。SNSなどですぐに世界の動向がわかりますからね。
それに作り手同士の情報交換もよく行われています。昨年はフランスのファクトリーに招かれ現地の人と交流しましたし、来日したビルダーとも触れ合いました。
それに僕はもともと誰かが手掛けたボードで“そのデザインいいじゃん”と思えば使わせてもらうことが多い。そこから新たなインスピレーションを得ることもあるんですよね」。
サーフボードはクラフト品だ。同じサイズでシェイプをしても、ビルダーそれぞれの個性が宿る。だから何かにとらわれることなく、自由に手にするほうがサーフィンは楽しいと、タッピーさんは考えている。
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