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手軽に作れないからこそ売り手も限られる

甘味のバランス、濃厚さ、食べ応えある食感まで、一朝一夕で作れるわけがない。どこでも買えない理由がおわかりだろうか。この難しいバランスで成り立っているカンノーリだが、目立たないようにひっそりと、でも着実に日本で普及してきている。


 
多くの人の口に合う理由は間違いなく、生地のサクッとした食感と、詰めものの濃厚でありながら爽やかな後味だ。噛むたびに、揚げた生地の食感とリコッタチーズの濃厚さのマリアージュに恋に落ちる。手でカンノーリを持つだけで、うれしくなる。どこから噛めばいいのか、食べても食べても、減らないように感じてしまう。

味もリコッタチーズにピスタチオクリーム、チョコクリーム、チョコチップ、ドライフルーツなどのさまざまな種類がたくさんあって楽しめるのだ。

ちなみに日本で「カンノーリとカンノーロの違い」を聞かれることがよくある。同じものなのか、種類の違いなのか? 実は同じもので、カンノーロ(単数形)とカンノーリ(複数形)という文法の違いなのだ。おそらく一般的には、ゴッドファーザーでも日常生活でも2本以上買うことが多いから「カンノーリ」の言葉が広がったのだろう。
 

リコッタチーズの名前の由来も面白くて、知れば「なるほど」となる。名前の由来はリコッタ(ricotta)=再び・2度(ri)と煮る(cotta)という意味からきている。通常のチーズ製造では、温めたミルクにレンネット(凝乳酵素)を加え、凝固したたんぱく質を分離してチーズにする。

リコッタは、そのチーズ製造時に出てきた水分=ホエイ(乳清)を加熱して固めて出来上がる。言葉通り、ricotta(再び煮る)なのだ。

昔から存在し、日本人の口にも合う美味しさなのに、いまだに爆発的ブームにはいたっていない。しかし、日本でむやみに広がっていないという事実が、結果的にカンノーリの価値を守っているのだ。

マリトッツォの流行は一気に広がって、名前もどこでも目に入って、そして日本の得意なアレンジからさらに広がった。結果、1年間でブームが去ってしまった。カンノーリがこの流れにならない理由は、作るのに手間がかかるのと、揚げた生地にリコッタチーズを詰めてからの賞味期限が短いためだ。


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