コミュニケーションとは相互的な交流のことです。決して一方的な関係ではありません。
ということは、コミュニケーションにおいては相手の話を聞くということも大切な要素です。「そんなことはわかっている」と言われてしまいそうですが、意外に私たちはこの当然なことができないのです。まさに“言うは易し行うは難し”。
この「話を聞く」ということが実は相当難しい。そしてコミュニケーションという意味は我々の中でいつの間にかすり替わり、「いかに効率的に相手にいうことを聞かせるか」という意味になってしまっている気もします。
これではいくらにこやかに落ち着いて話そうとしても、相手とはすでに対立的な関係になっているため、体も顔もこわばって大きなストレスを抱えることになってしまいます。
では、なぜ我々は相手の話を聞こうとしないのでしょうか。
心理学的に説明するならば、コミュニケーションに何かしら大きな抵抗を感じているから。もっと端的にいえば一種の「恐れ」を感じているから、という可能性があります。
では我々は何に恐れを抱くのでしょうか。一つの仮説なのですが、それは「相手によって自分が変えられてしまうかも知れない」という恐れです。
先ほども申しましたが、本来コミュニケーションとは、相手のことを理解するという段階が含まれているはずです。
しかし、相手の言い分を理解すると、時として自分の考え方、信念が変えられてしまうかも知れない。それを我々は潜在的に恐れるのです。
別の言い方をすると、相手の話を正面から聞ける人は、「自分が相手によって変えられることを恐れない人」ということになります。
しかし実際には、この部分に心の壁があることが多い。ですからコミュニケーションという前提自体に、なかなか人は立てないのです。
さらには、相手が従わないとき、自分は相手から尊敬されているべきだ、というような立場や地位に執着した態度も芽生えてきます。
そうなると余計に考え方を変えることができず、苦しむ結果になります。
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