子供も大人も、歯の矯正が当たり前の時代になってきた。
だけど、そもそも歯並びって良くないといけないの? 矯正するならタイミングはいつがベスト?
今回は、意外に知られていない“歯の矯正の基礎知識”について、小児歯科専門医の網野重人先生にアドバイスをいただいた。
話を聞いたのはこの人! 網野重人●医療法人社団桜翔会桜堤あみの歯科院長。日本小児歯科学会認定小児歯科専門医。1995年昭和大学卒業。2008年に桜堤あみの歯科を開院。患者へのコミュニケーションを重視し、子供の成長や個性を考えた治療を日々行っている。著書に『子どもの歯を健康に育てる方法』(現代書林)。
歯の矯正=個々のオーダーメイド治療!
――そもそも、歯の矯正って本当に必要なんでしょうか? 基本的に、“見た目の良し悪し”という観点で医師から矯正をすすめることはありません。本人が気にならないのであれば、必ずしも矯正をする必要はないと思っています。
早期の治療が望ましいのは、“反対咬合(咬み合わせたとき、下の前歯が上の前歯より前に出てしまう状態)”などといった、骨格に問題があるケースですね。そのほか、虫歯・歯周病になりやすい歯並びである場合や、噛み合わせが悪く体調に不調をきたすといった健康に影響を及ぼす場合です。
また、お子さん自身が歯並びを気にして、口を開けておしゃべりするのがつらいといった心因的な問題がある場合なども、矯正治療を提案することがあります。
――歯の矯正をする子供が増えているように感じますが、実際はいかがでしょう? 確かに、検診などで最も多いのは子供の歯並びに関する質問で、よく親御さんから、「〇〇ちゃんも矯正を始めたので、そろそろうちも始めたほうがいいですか?」などと聞かれることがあります。
ネット上にも歯科矯正に関する情報は溢れているので、調べていくうちに焦ることもあるでしょう。しかし、矯正は一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療です。誰かと比べたり、ネットの情報に振り回されたりしないことが大切です。
――早いうちに矯正したほうがいい、という話も聞きますが……。 見た目が気になる思春期より、幼い頃に終わらせたいという気持ちもよく理解できます。けれど、子供の場合、その子自身に合った適切なタイミングがあるので、必ずしも急がないほうがいいとも言えます。
というのも、成長途中の子供の口内は変化が激しく、歯の大きさや歯の生え替わりの時期などに個人差があるんです。
また、早めに矯正治療を終えたとしても、成長とともに歯の土台となる顎と歯のバランスも変わるので、顎の成長が終わった時点でもう一度、仕上げの矯正が必要になるケースが多いということも覚えておきましょう。
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