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なぜ文庫化されるのか?

それにしても、なぜ今『百年の孤独』が文庫化されるのだろうか。背景には、近年のラテンアメリカ文学への注目の高まりがある。日本におけるラテンアメリカ文学の刊行スピードが、以前に増して上がってきているのだ。

2020年の寺尾隆吉著『100人の作家で知るラテンアメリカ文学ガイドブック』(勉誠出版)によれば、研究者・翻訳者の増加や、セルバンテス文化センター東京の開館後制度面での支援体制が整ったことなどの理由により、ラテンアメリカ文学の翻訳が近年急速に進んでいるとのことだ。当店でもグアダルーペ・ネッテルやホセ・ドノソなどの新刊を大きく展開し売り上げを上げていることから、ラテンアメリカ文学の読者の多さがわかる。

最近ではホルヘ・ルイス・ボルヘスの『シェイクスピアの記憶』が岩波文庫より発売されたが、売り上げが予想をはるかに上回り、慌てて追加発注をおこなった。20世紀の世界的ブームから、様々な出版社による邦訳書の刊行を経て、今「ラテンアメリカ文学」というジャンルがしっかりと日本に定着したと言えるだろう。


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