過酷な撮影現場で見つけた俳優業の面白さ
「常に自然体」というが、かつては国民的なアイドルとしての栄光を背負っていた前田さん。何かしら世間と自身の心のギャップを感じていたはずだ。当時のイメージについて思いを語ってくれた。
「全然、そんなことないですよ。たしかに、そう見えたこともあるかもしれませんが、仲間の存在があったからこそ、アイドルとしての輝きを放つことができました。一人だったら、おそらくアイドルにはなれなかった。
だから、一人で多くの役割を担うことには、いまだに慣れません(笑)。しかし、役者は仲間との連携やチームワークが大切で、それはアイドル時代から培った部分かもしれませんね」。
撮影現場での創造的なエネルギーと、仲間たちとの絆の深さを語る彼女の表情は、映画制作の裏側に潜む困難と喜びを物語っていた。
「今作は、限られた撮影日数で、集中力を磨く貴重な機会でした。監督と私たちは一丸となって撮影に臨み、時の流れを忘れ、40時間があっという間に過ぎ去ったこともありました。過酷な環境ではあるんですが、それを乗り越えたあとのスタッフやキャストの雰囲気は素晴らしく、元気をもらえるんです。
人が覚醒する瞬間を共有できるのは、この職業の特有の魅力です(笑)。キラキラしていない瞬間も含めて、この仕事が好きだなと改めて感じました」。
© bouquet garni films
『一月の声に歓びを刻め』での演技において、前田さんは、人間の内面を深く掘り下げる作品であり、観る者にとって自己発見の旅となることを願っている。
「この映画は、人々が抱える痛みを瞬間ごとに描いています。登場人物それぞれに異なる問題があるんです。私たちは生きていく中でさまざまな経験をし、人に見せない顔を持っています。それが苦しいこともあるけれど一歩踏み出せたときに最高の経験になったりしますよね。
私たちは、それぞれが抱えている痛みを理解し、受け入れるべきだと感じました。この映画が、自分を見つめ直すきっかけになり、そして答えを見つける手助けになればいいと願っています」。
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後編では、休日の過ごし方や前田さんが考える理想の子育て像などを伺う。