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なぜ自動運転時代に、片道レンタカーなのか

小野﨑は大学院でドローン研究を行い、卒業後、豊田通商に入社。同社で自動運転モビリティサービスの開発などを手がけていた当時、日本が抱える大きな課題に気づいたという。

「自動運転の時代には、交通機関にレンタカーやパーソナルモビリティーを連携させ、個人の需要に合わせてシームレスな移動を実現するMaaS化が求められます。すると人々は車体などのハードより、移動そのものやその仕組み、ソフトの部分を重視するようになるはずです。しかし日本はハードにこだわりすぎて、ソフトを後回しにしがちです」

小野﨑はその後、自動運転の最適配置プラットフォームを構築するビジョンを掲げ、Pathfinderを起業。しかし同社のコア事業は現在、片道レンタカーだ。なぜ小野﨑はそこに着眼したのか。

今後『カタレン』では、大手レンタカー会社やコインパーキングの運営会社など、提携先を増やしていきながら、車両の貸し出し・返却用の拠点数を拡大。現在はレンタカーの店舗レベルで行っている車両の最適配置の粒度を、地域レベル、地区レベルと段階的に引き上げていく予定だ。
 
「自動車の『所有から利用へ』と変化する消費者意識を背景に、日本のレンタカー市場は成長を続けています。過去20年で車両台数は約3.2倍に増え、2023年には約101万台まで増加しました(※)。『カタレン』を通して、走行データを始め車両やユーザーのデータを蓄積していけば、近い将来、AIを使ってそれらの移動予測ができるようになります。

そしていずれはレンタカー会社やメーカーの枠を超えて車両を最適配置し、ユーザーとマッチングするアルゴリズムを構築できます。完全自動運転が当たり前の時代には、ユーザーのライフスタイルや嗜好に基づき、車両が必要な時に先回りしてユーザー宅前に到着している、そんな世界の実現に貢献したいと考えています」

※2023年3月末時点。全国レンタカー協会調べ

同社は2024年の年明けを目処に、AIを使った車両の最適配置アルゴリズムについて、国立大学と共同研究を始める予定だ。

そして今後、まずはユーザーや提携事業者を増やし、日本でレンタカーの片道利用を一般化。中期では、地図アプリや旅行サイトなど、大手プラットフォーマーのサービスに「カタレン」を組み込んでもらうことで利用を拡大していく。

「レンタカーは、MaaSの実現に向けて欠けているピースの一つ。我々がDX化し、片道ずつ使いやすくバラ売りしてMaaSに組み込むことで、人々がより便利にストレスなく移動できる世の中を作っていきたいですね」
 



大柏真佑実=文
Forbes JAPAN=提供記事

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