「成果主義」が組織市民行動を減らした
このような各自の意思で組織に貢献しながら、見返りを期待しない「会社のためになる役割外の行動」を、専門用語では「組織市民行動(Organizational Citizenship Behavior)」と呼びます。
例えば、「職場のゴミを拾う」や「想定外のトラブルへの対処」なども該当します。これは、昔は日本の職場にはふつうに根付いていたことです。
それをこの「失われた30年」の間に、会社が従業員に要望したことに対する成果だけで厳密に評価する、いわゆる「成果主義」を導入したことで、従業員の側も「そんなことであれば、要望されたことのみに労力を集中する」となったのだと考えられます。
若手が恩義を感じるほど会社は「与えて」いるのか
始業前準備や早めの出社も、本来は命令するほどのことではない「組織市民行動」です。
それができないのは、組織市民行動を促すような“愛着”を、会社や同僚や仕事に持ってもらえていないからです。若手に「職場のために貢献できることならなんでもやりたい」と思ってもらえるように仕向ける必要があります。
恩義や愛着を感じた相手には、自ら役割外行動を取るものです。ベテランは長年の会社や先輩からの恩義を自然に感じるでしょうが、入社したばかりの若手はそうではありません。
彼らが自然に「職場のために頑張りたい」と思えるよう、まずは上司や会社の方から、若手に愛着が芽生えるよう「与えて」いかなければならないのではないでしょうか。