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コンドームの装着方法も学んでいた日本の性教育は、なぜ後退したのか?

“性教育の今“を知る前に、日本における性教育の歴史を大まかに把握しておく必要がある。

遡ること約30年前、1992年は“性教育元年”と言われ、「小学生から本格的に性を学ぼう」という気運が生まれつつあった。

仮画像_TENGA提供画像

出典:現代ビジネス「フリーセックスを煽っている」と猛バッシングされ、絶版になった、幻の性教育冊子『ラブ&ボディBOOK』その驚きの中身


その一例としては、厚生労働省所管の公益財団法人「母子衛生研究会」によって作成された冊子『思春期のためのラブ&ボディBOOK』が挙げられる。中学3年生向けに作られ、子供たちに配布されたものだ。

そこには、コンドームの装着方法やピルに関する基礎知識、性的同意とは何か、などについて記されている。当時、学生時代を過ごした40代の読者の中には、覚えている方もいるだろう。
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こういった割と踏み込んだ内容を含む性教育について、「今ようやく日本でも議論されるようになった」と感じているかもしれないが、実は30年前にもその潮流があったということだ。

ではなぜ、日本の性教育は後れを取ってしまったのか。そこにはいくつかの理由がある。



「2002年に都立七生養護学校で行われていた性教育について、『過激な性教育はやめろ』『寝た子を起こすな』といった、激しい批判が起こりました。

果ては裁判沙汰になるほどの大きな出来事になったのですが、このことが、日本が“性教育後進国”となる大きなきっかけになったことは間違いないと思います」(福田眞央さん、以下同)。

この一連の“事件”は当時、国会でも過剰に問題視された。「中学生の性行動を煽っている」などという不条理のもと、前述の『思春期のためのラブ&ボディBOOK』も回収・絶版となった。



そこから現在までのおよそ20年は、“性教育ネグレクト”、あるいは“失われた20年”と呼ばれ、文字どおり日本の性教育の長い停滞期がはじまったのだ。

「今30歳くらいの方の中には、学生時代に性教育というものを受けた経験がない方もいるかもしれませんね。あるいは、今もずっと行われていないもの、という印象をお持ちかもしれません」。

日本では子供に限らず、大人でも性をタブー視する風潮が根強い。これは長い間、適切な性教育を怠ったため、性に関する理解度に個人差が生まれたことが一因と言わざるを得ない。
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“性教育ネグレクト”の20年を経て、少しずつ進展も

そんな性教育の実情を変えるべく、“失われた20年”を経て、まさに今、「改めて性教育を見直そうという動きが、本格的に起こりつつある」と福田さんはいう。



2021年には「生命の安全教育」という名目のもと、文部科学省から性教育に対する義務付けが行われるようになった。

具体的には、身体的な性の話に加えて、「プライベートゾーンを他人に見せないこと」「デートDVの危険性」「SNSで人と出会うことのリスク」などが盛り込まれ、今の子供たちが置かれている現状に即した内容にアップデートされつつある。
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このように国が重い腰を上げたことで、性教育に関わる人たちのさまざまな試みが、より活発化するようになったという。

「子供向けの性教育に関する書籍などは、ここ2〜3年の間にすごく増えていますし、生理用品も多様化しています。また2023年6月には、『不同意性交罪』が施行され、性同意年齢が13歳から16歳に引き上げられるなどの法改正も行われました」。
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