反転液晶タイプのカシオの逆輸入モデル「W-800H」。「カシオのデジタルなのですが、Gショックではない。実際、着用頻度はそれほど多くありません。時間を知るために着けているわけではないので、毎日着ける必要はないかなと」。ヒエラルキーの埒外にある物選びも、人に「?」を突きつける梶さんらしい。
「OCEANS WATCH CLINIC」とは……▶︎すべての写真を見る 現在、梶 雄太さんが所有する時計は、カシオのデジタルウォッチ、いわゆる“チプカシ”一本のみ。それも自分で選び抜いたのではない。友人が着用していたものをいいねと言ったら、同じものを購入してくれたのだ。
「時計を選ぶって僕にとっては結構難しい行為。自分らしさというものが、自然に積み重ねられているとするなら、いったいここに何をつけ加えるのが相応しいのやら……」。
普段の梶さんは、スウェットにTシャツにデニム、そして、ニューエラのキャップというシンプルな出で立ちでお馴染み。
職業柄、腕時計が「自分らしさ」を投影できるアイテムだと実感しているからこそ、その領域にはおいそれと踏み込めず、自分にフィットする時計は何なのか、決めあぐねているのだ。
「今日は僕に似合う時計を選んでいただけると聞いて、楽しみに来ました。まな板の上の鯉です(笑)」。
さらに話を伺うと、普段のスタイルにも梶さん流の思いが通底していることが判明する。
「自分という存在を、服装でわかりやすくプレゼンテーションすることほどつまらないことはない。“なんでそうなるの?”と人に疑問に思わせ続けることが理想です。
例えば僕はアメリカものが好きだと思われがちですが、実はそうしたカルチャーからはあまり影響を受けてなくて。ビジュアルとパーソナリティはかけ離れていたほうが面白いんです」。
スタイリストとして、デザイナーとして、真摯に服と向き合うからこそ導かれた独自の感覚が見て取れる。
一方で、ゴールドは好みだそう。「ギャングスターが身に着けるようなギラギラした強いイメージではなくて、繊細で工芸品のようなエレガンスなゴールドに惹かれます」。
そうした思いを汲んで選んだのが、クラシカルデザインで小ぶりなゴールドウォッチ、ヴァシュロン・コンスタンタンの「トラディショナル マニュアルワインディング」だ。
「トラディショナル マニュアルワインディング」K18PGケース、38mm径、手巻き。338万8000円/ヴァシュロン・ コンスタンタン 0120-63-1755
ダイヤル周縁のレイルウェイミニッツトラックやバーインデックス、ドーフィン針が繊細な美観を形成。その顔立ちは、名前どおりブランドの伝統を継承したものだ。
オパーリンダイヤルとゴールドケースの対比も美しい。65時間のパワーリザーブを備えた手巻きムーブメントを搭載している。
「素敵な時計を選んでいただいてうれしいです。ブランドの立ち位置も好み。僕とギャップのある繊細な見た目が気に入りました(笑)」。
チプカシしか着けない梶さんがなぜ? 会った人たちにこんな疑問を抱かせたら梶さんの勝ちだろう。
スタイリスト 梶 雄太さん●キャリア26年目を迎え、さまざまな媒体で活躍。自身のブランド「サンセサンセ」でも独自のセンスを発揮して、クリエーションへの意欲を見せ続ける。
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