OCEANS

SHARE

編集者・野口尚子さん

「世界の捉え方が広がるゲーム実況は、可能性の宝庫です」

野口尚子さん
1984年生まれ。武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業後、エディトリアルの制作会社などを経て、デザイン誌「月刊MdN」の編集に携わる。現在はITベンチャーに勤めながら、フリーの編集者としても活動。デザインの知識や編集技術をもとに、コンテンツ制作やブランディング、コーポレートコミュニケーションに携わる。
https://printgeek.myportfolio.com/
 

私はライトゲーマーで、むしろプレイヤーとしては下手なほう。一方で、ゲーマーの皆さんの実況動画を見るのが大好きで、楽しそうにプレイされているのを毎日のようにウォッチしています。近年注目しているのは、ゲーム実況者・なむさんが始めた『ゲームさんぽ』という動画コンテンツ。

気象予報士や古代ギリシャ建築家など、さまざまな背景・専門性を持った人たちとゲーム内を「さんぽ」することで、世界の捉え方は人によってまったく違うのだということが見えてきます。これはゲームを通して、私たち自身の視点を拡張するような、とても面白い試みです。

ゲームが、私のように視聴者として楽しむ人も含めた「みんなのコンテンツ」になってきた背景の一つには、配信や投稿に関わるガイドラインの設定があります。ゲームは著作物なので、本来は第三者が勝手にゲーム内の映像や音楽を利用することはできません。

しかし、配信やSNSでの利用についてメーカー各社がガイドラインを定め、ある程度の範囲で利用できるようにしていく動きが広がり、より多くの人がゲームに親しめる環境が生まれています。こうした取り組みは、今後ゲーム以外の分野でも検討されていくのではないでしょうか。また、ゲームを原作としたアニメ化などメディアミックスも広がっていますし、ゲームは世代を超えたカルチャーのハブになる可能性があるなと感じています。

さらに、ゲームの中の世界が豊かになっていくにつれて、よりゲーム外の専門性も求められていくはずです。例えば、フランスのUbisoftが制作している『アサシン クリード』シリーズは、古代のエジプトやギリシアなどを舞台に、まるでその時代に訪れたかのような街並みを描き出しています。これらは丁寧な時代考証がなければ実現しません。

デザインの側面でも、グラフィックや建築、ファッションなど現実世界のデザインの知識・技術がゲームの世界で活かされるようになるはず。よりさまざまな分野の人たちがゲームに携わり、作り手の垣根がなくなっていくようなことが広がればいいなと期待しています。



5/6

次の記事を読み込んでいます。