OCEANS

SHARE

結果的にサンコーは開発に20年以上も要した末、摩擦に強く、繊維の柔軟性を損なわない金属化加工に成功したのである。しかし、ようやく実現した魔法の繊維をウエットスーツへ応用するには、困難を極めた。

そうして、コスト低減や加工速度アップといった難題をクリアするためにさまざまな試行錯誤を繰り返している中、ついに理想の繊維に出合う。帝人フロンティアの「高中空構造エアロカプセル」だ。

2022年に量産化の目処が立ち、翌23年正式に銀(AG)とチタン(Titanium)の金属特性を併せ持つ「AGT210」を2023年モデルとして発売に結びついたのだ。

株式会社サンコー資料

株式会社サンコー資料


この「AGT210」は理論上ラバースポンジの厚みを3割減らしても、その保温性を確実にキープする。つまり、従来5mm厚必要だったものが3.5mmに、3mm必要だったものが2.1mmになっても、同じ暖かさのウエットスーツとなる。これはウエットスーツを着たことがある人なら誰にでもわかる、革命的な進歩と言える。

そんな夢のウエットスーツの製造には、20年30年と経験を積んだ熟練の職人技が必要だ。工場では、客のサイズデータから、体型を具現化するパタンナーや、熟練の貼り手、送りベルトの厚みと速度を完全にコントロールする繊細な技術を持った縫い子たちが、世界最高レベルのカスタムウエットスーツを生み出している。

サンコーが理想とするウエットスーツ作りは、どんなにAIが進みDX化された工場でも、最終的には優れた職人の手がなければできない。そして、その職人自身が海を愛し、海とともに暮らすことを誇りにしていく姿勢を持っていることも大切なのだ。

これからもサンコーは海を愛する気持ちとともに、素晴らしいウエットスーツを生み出し続けてくれることだろう。


[問い合わせ]
ビーウエット
www.bpd21.com/wetsuits/

POW-DER=文

SHARE

次の記事を読み込んでいます。