ひどい腰痛や高血圧、糖尿病、胃腸障害といった身体の不調が、実は脳過労と睡眠負債が原因だった、ということは珍しくありません(写真:Ushico/PIXTA)
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睡眠負債の先には生活習慣病が控えている!
睡眠負債は万病の元。睡眠負債の先には、高血圧や糖尿病、脳卒中、うつ病・MCI(軽度認知障害)といった、いわゆる「生活習慣病」が待っています。
ある患者さんの例を紹介しましょう。
Aさんは電気通信会社に勤めるサラリーマンです。元来、健康体だったのですが、今年になってから体調不良を訴えるようになりました。
まず、健康診断で高血圧と糖尿病を指摘され、薬を飲み始めました。さらに、胃痛や胃もたれで胃カメラ検査も受けました。検査の結果、胃には異状はなかったのですが、医者からは数種類の胃薬を処方されました。
加えて、ひどい腰痛に! 頑固な腰痛が続くため、近所の整形外科を受診しました。
そこでのレントゲン検査などでは、異状なし。しかし、その後も、鎮痛剤を服用しても、接骨院に通っても、痛みは一向に軽減しません。
当院を受診され、諸検査をしました。その結果、脳の前頭葉の機能が低下し、脳過労がさまざまな体調不良の原因になっていることが判明しました。私は「睡眠負債による身体表現性障害」と診断しました。
Dr.O「Aさんの、腰痛・高血圧・糖尿病・胃腸障害の根本的原因は、すべて同一犯人の睡眠負債の可能性があります。これらの体調不良は、すべて最近起こってきたのですよね?」
Aさん「はい」
Dr.O「睡眠負債によって、もっとも影響を受けるのは自律神経です。熟睡中に交感神経が沈静化し、副交感神経が活動するのです。Aさんは睡眠負債によって、交感神経優位・副交感神経劣位が継続しているのです。交感神経優位が高血圧や糖尿病の状態を引き起こし、副交感神経劣位は、胃腸障害を引き起こしているのです」
Aさんは、睡眠薬の導入によって体調を回復し、鎮痛剤・降圧剤・抗糖尿病薬・胃腸薬を中止することができました。その後、熟睡習慣の導入によって、睡眠薬も1カ月で中止できました。
症例のAさんのように、ひどい腰痛や高血圧、糖尿病、胃腸障害といった身体の不調が、実は脳過労と睡眠負債が原因だった、ということは珍しくありません。この脳過労や不眠が、身体の至るところで悪さをしています。
これらは万病の元。脳過労や睡眠負債が、血圧を上げ、自律神経を乱し、身体の痛みを引き起こしているのです。
このように、睡眠負債はさまざまな生活習慣病と密接に関係しています。例えば、腰の痛みやめまい、肩こりなどといった、一見、寝不足とは関係ないような症状も、眠れないことによって脳の疼痛(とうつう)調節機能が低下したり、自律神経の活動が不調になるなどで生じる場合があります。
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