OCEANS

SHARE

ディカプリオが、『タイタニック』の爆発的ヒットで世界的スターになったのは26年前のこと。それ以前から映画通の間では、『ボーイズ・ライフ』『ギルバート・グレイプ』などで注目されていた。

ロバート・デ・ニーロは『ボーイズ・ライフ』で共演したディカプリオに強く感心し、マーティン・スコセッシに「いつかこの子を使うべきだ」と推薦している。

主演作『ロミオ+ジュリエット』も全世界で1億5000万ドル近くを売り上げるヒットとなっていた。それでも、20億ドルという歴代最高記録を立ち上げた『タイタニック』がもたらした影響は、とんでもないものがあった。

イケメン扱いが面白くなかった

それは当時、ディカプリオを大きく当惑させている。ずっと後に彼が「自分の顔がキーホルダーになっていることに慣れるなんて不可能」と語ったように、突然にして全世界の女性のアイドルになり、騒がれるのは、非常に居心地が悪いことだったのだ。
advertisement

イケメン若手スターと呼ばれるのも、面白くなかった。そんな彼はプライバシーを守るために非常に神経質になり、アメリカの一流雑誌の記者が丸1日以上張り付いた独占インタビューでも、話すのは環境問題についてくらいで、自分のことはほとんど語っていない(この姿勢は基本的にその後も崩しておらず、筆者が何度か彼をインタビューした際も、たとえば「あなたがこのキャラクターの立場だったらどうしますか?」と聞いても、「このキャラクターの考えはこうだったんだ」と言うだけで、「自分だったら」についての返答は避ける)。

当然のことながら、『タイタニック』の後、ディカプリオには山のようにオファーが舞い込んだ。しかし、次に何をやるのか、彼はしばらく決めなかった。ようやく発表されたのは、ダニー・ボイルが監督する比較的小規模な『ザ・ビーチ』。ボイルは『トレインスポッティング』で注目されたばかりのイギリス人監督で、『タイタニック』とはまったく異なるものを選びたかったという思いが見える。
3/4
『ザ・ビーチ』が公開されたのは、『タイタニック』の2年2カ月後。その間、『仮面の男』と『セレブリティ』が公開されたが、これらは『タイタニック』公開前に撮り終えていたものだ。そこから今に至るまで、ディカプリオは、毎回念入りに出演作を選んできている。

彼が組むのはたいてい、巨匠と呼ばれる監督だ。スコセッシとは『ギャング・オブ・ニューヨーク』以来6度仕事をしたし、それ以外にはクリント・イーストウッド、アレハンドロ・G・イニャリトゥ、クエンティン・タランティーノ、クリストファー・ノーラン、サム・メンデスなどと組んできた。オスカー目当てというよりも、優れた監督と優れた作品を作るのが好きなのだろう。

主演男優賞に何度も候補入り

とはいえ、アカデミー賞にも、しっかりと6度も候補入りを果たしている。ついに主演男優賞を受賞したのは、5度目のノミネーションだった『レヴェナント:蘇えりし者』でのことだ。

『タイタニック』では、作品も、相手役のケイト・ウィンスレットも候補入りしたのにディカプリオが漏れたこと、その後も候補入りはしても受賞はしなかったことから、晴れて受賞がかなう前は、日本の映画ファンからも「ディカプリオはアカデミーに嫌われている」との声が聞かれたが、筆者は昔からそれを否定してきた。
advertisement

あれだけ多くの映画がある中で5人の候補枠に入るのはすごいことで、それを何度も達成してきた彼がアカデミーから嫌われているはずはないのだ。それに、受賞にはいろいろなタイミングや要素が絡むもの。それがうまく合わさったのが『レヴェナント』だったに過ぎない。

比較すると、スコセッシとて1980年の『レイジング・ブル』で初めて監督部門に候補入りしたが、受賞したのは6度目のノミネーション(『ディパーテッド』)だ。もう何度も受賞しているように思われがちなデ・ニーロも、『レイジング・ブル』で2度目の受賞をして以来、40年以上、一度も受賞していない。
4/4

次の記事を読み込んでいます。