限られた時間のなかで自分がやるべきこととは?
コツコツと積み上げていくスタイルだからこそ、実はワークライフバランスは全然取れていないと笑う皆川さん。オンとオフの切り替えも作りたいとは思うものの、自宅に戻ってもビジネスのことが頭から離れない。
「唯一できているのは、朝起きたら、お風呂に入って、ストレッチをして、コーヒーをちゃんと入れて飲むことぐらい。それぐらいはしないと、本当に日々がつまらなくなっちゃうので(笑)。
ただ、今年、経営者でプロモーターの日高正博さんとお仕事を一緒にさせていただいたのですが、日高さんがフジロックを作ったのは46歳のときだって言うんです。
今の僕と同じ年齢のときにあのフェスをイチから作り上げたバイタリティは本当に凄いと思いませんか? そう考えると今から僕にできることは何かということを改めて考えさせられますよね」。
1日24時間、1年365日というのは、世界の人々にとって唯一、平等に与えられているものだ。だが、そのなかで自分が何かを成し遂げようと思うのならば、きちんと考えて取捨選択をしないと絶対的に時間が足りないと皆川さんは語る。
「僕の父は61歳で亡くなっているので『僕の冬はあと20回も来ないのかもしれない』と思ったりもして。そう考えると僕に残された時間はどれぐらいあるんだろうって考えるんです」。
その思いを強くしたのは、IT企業「GREE」の創業者である田中良和氏と出会ったことがきっかけだった。
「あるとき田中さんに『あれもやりたい、これもやりたいと思っているけれど、でもそれは賢太郎の人生にとって、有限な時間を消費してまで重要なことなの?』って言われたんです。そこで改めて自分の人生を真剣に考えて、僕は雪山のことしかやらないと決めました。
だから仕事のオファーはいろいろいただきますけど、有限な時間のなかで、本当に自分がやるべきことなのかを判断基準にしています。お金になるかどうかは、僕にとっては重要ではないんですね。
あと、今は経営者として駆け出しで、時間が足りずに手付かずのものも多いので、これからどう折り合いをつけていくかが今後のテーマですね」。
有限な時間だからこそ、アグレッシブに活動を続ける一方で、ときには待つことも、人生の中で重要だと皆川さんは考えている。
「人生の転機とよく言いますが、僕自身の人生を振り返ってみても、転機って簡単に手に入るものではないと思うんです。
例えば、僕は現役時代から、引退したらリゾートの仕事をやりたいとずっと言っていて、そのために世界中のスキーリゾートを回ってきました。でも、そのときはこれが何に生きるのか答えが出ないし、他人から見たら贅沢をしていたり、趣味のようにも思われて、気持ちが揺らぐこともありました。
だけど、自分がいざこの仕事を始めたら、設備の耐用年数や海外のケースモデルもすべて頭に入っていて、スムーズに仕事に生かすことができた。そこまできて、初めてやってきたことは無駄な時間じゃなかったと思えたんですね。
今は何モノにもならなくても、いつかはブレイクスルーがあるかもしれない。だから無駄に思えても、自分が好きなことにはきちんと向き合うべきだし、人よりも待つ時間を多く持つことも実は重要だと思っています」。
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