チェコの富豪がアウトバーンのA2を時速417kmで走行
永田氏が記録した時速317kmというスピード違反の「記録」は、伝説の一夜から約25年が経った今もまだ破られていない。では、公道を時速317km以上で走った者はいないのかというと、それはまた別の話だ。
永田氏自身、2005年にドイツの高速道路であるアウトバーンで時速341kmでの走行を記録している。ドイツのアウトバーンには、速度制限のない区画があるのだ。つまり、時速300kmを超えるスピードで疾走しても、その区画ではスピード違反にならないのである。
しかし、昨年このドイツのアウトバーンをめぐって、ちょっとした議論が巻き起こった。チェコの富豪が、アウトバーンのA2を時速417kmで走行したとして警察の取り調べを受けたのだ。
この富豪は2021年に高級スポーツカーでアウトバーンを走行する様子を動画撮影して、You Tubeに投稿している。その動画のなかで、速度計が時速417kmを示していたのだ。
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時速400kmオーバーでの走行となると、何らかのアクシデントが起きた際にブレーキを踏んでもすぐに停まるというわけにはいかない。いくら速度制限がない区間とはいえこれはやりすぎなのではないかと、違法性を問う声があがったのである。
速度制限がない道路でも速度によってはこのように議論の的となるのだから、速度制限のある公道で時速341kmものスピードで走ることがいかにとんでもないことなのかは、想像にかたくない。
スピード違反の記録に関しては、2018年にベルギーのとあるドライバーが公道で時速696kmを出したとして違反をとられたという珍ニュースも、一時世間を騒がせた。オペル アストラというドイツの自動車での走行だったが、これはコンピューターのエラーによる誤通知で実際には時速60kmほどしか出していなかったという。永田氏の「記録」は、この先もそうそう破られることはなさそうだ。
より速く、より安全な法定内の走行を
今年1月に開催された「東京オートサロン2023」では、トヨタの豊田章男社長(現在は代表取締役会長)がブース巡り中にトップシークレットのブースを訪れて永田氏と会話を交わしたことが、チューニング愛好家のなかで話題となった。
豊田社長(当時)は、永田氏と顔を合わせるなり「スピード違反の?」と問いかけている。どうやら、天下のトヨタにも永田氏のことは知られているようだ。
スピード違反はむろん、実に反社会的な行為であり、ゆめゆめ称えるなどされるべきものではない。大型トラックなどの速度制限引き上げが取り沙汰される昨今、より速く、より安全に走れる車両・道路整備・環境整備・法整備などへの取り組みを望みたい。