渋谷・百軒店の「小料理百けん」を渡辺真史が訪問「いい店の条件をハイレベルで満たしてます」

渡辺真史●1971年、東京都生まれ。ベドウィン ＆ ザ ハートブレイカーズのディレクター。ローカルとインターナショナル、2つの視点で東京をクルージング。

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道玄坂から脇に逸れた、色気ある小道。かつて渋谷の中心として名を馳せた商店街、しぶや百軒店には、今でも東京の粋な文化が根付いている。「小料理百けん」。オーナーである松﨑友江さんに話を伺った。

渡辺　友江さん、営業前にすみません。今日はよろしくお願いします。

松崎　こちらこそ。いつも14時頃から仕込みを始めていますので、何も問題ありませんよ。

渡辺　以前この連載でも紹介した「ビートカフェ」のカトマンに連れてきてもらって以来、お世話になっています。どの料理も美味しいし、お酒の種類が豊富。ふらっと来ても、わりと入りやすい。僕が思う“いい店”の条件をハイレベルで満たしてくれています。あ、いい感じの若女将の存在も重要です（笑）。

松崎　ありがとうございます（笑）。

渡辺　友江さんは僕と同じ武蔵野美術大学出身で、以前はジュエリーデザイナーでしたよね。かなり珍しい進路変更だと思います。

松崎　ええ、お酒が大好きで（笑）。一念発起して、しぶや百軒店に出店しましたが、やはりここは飲み歩きができる素敵な商店街です。ユニークな個人店が軒を連ね、なにより遊んでいる大人たちが面白い。大学の同期やデザイナー時代の友人も顔を出してくれて、楽しくやれています。



渡辺　ここは内装も気が利いている。落ち着きの中にカルチャーが薫るというか。グッチメイズさんのアートワークが飾られているのも印象的。

松崎　実は彼、大学の後輩なんです。よく店に来てくれていますよ。

渡辺　なるほど。友江さん自身、お酒は今も楽しんでいますか？

松崎　昨夜も営業後、常連さんとレコードバーの「アナログ」へ……。

渡辺　さすがだな〜。でも正直な話、友江さんの第一印象は、かわいいのに無愛想な人。だからといって嫌な感じはない。不思議な魅力です。

松崎　過剰な接客といいますか、取り繕う関係が好きではなくて。だって、お酒を飲みながら自然と仲良くなれたほうが面白いじゃないですか。こんな性格だからか、口コミサイトに悪評が載ったりもしますよ。

渡辺　はは（笑）。そんな、ある意味で少し格式の高い感じも店の味になっていると思います。今度ゆっくり伺ったときは、僕の好きなセロリ餃子とホタルイカの沖漬けをいただくのを楽しみにしてますね！ これがまた冷めても美味しい。そうだ、先日は新しい店をオープンされましたね。おめでとうございます。

松崎　明大前に「フック」というバーができました。そちらでもぜひ、一杯引っ掛けていってください。

——夕暮れ時。今日も人は酒と灯りに誘われ、そっと暖簾をくぐる。