いざ被災したら、誰も何もしてくれない
当連載では、水や食品の備蓄に、日用品の備え、震災時に役立つさまざまな防災テクニックを紹介してきた。しかし、ただ備えるだけでは不十分。「防災は日常の延長にあるもの」という意識を持ってほしいと辻さんはいう。
「被災を『スライドショー』のようにイメージされている人が非常に多いと感じます。テレビのニュースを見て、『普段の生活』→『突然の被災』→『避難所生活』→『3日後くらいから徐々に復旧』→『1週間後にはほぼ元通り』みたいな経緯をイメージするのではないでしょうか。
でも実際に現地に行くと、そこにはちゃんと人が生きていて、とても辛い時間を過ごしている。つまり、“間”がちゃんとあるんです」(辻 直美さん、以下同)。
いくつもの被災地へ赴いた国際災害レスキューナースの辻さんは、情報と現実が大きくかけ離れていることを、身を持って痛感している。
「基本的に被災時は、誰も何もしてくれません。すべて自分でやらなければならない。逃げるかどうかも自分で決めなければいけない。
避難所へ行けば何とかなると、何も持たずにやってくる人がたくさんいるんですね。でも、まわりにいる人も同じ被災者。自分と同じように必死ですから、何もしてくれないし、何も分けてもらえない。これが現実です」。
辻さんは、避難用のリュックに食料を少し多めに入れ、「困っている人には差し上げるつもりで用意している」という。しかし、それは被災した人を守らなければならない立場や実体験があればこそ。
避難所では、まわりに気を配る余裕などないのが普通だ。だからこそ準備が必須で、さらにそれらをどう使うのか、シミュレーションしておかなければ意味がない。
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