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ファッションシステムに乗らない

寺西自身、元々日本の伝統に興味があった訳ではない。ヨウジヤマモトで生産管理を担当した後、パタンナーの道へ。服づくりの知識や技術は現場で身につけた。ミラノへ渡り、「キャロル クリスチャン ポエル」などで経験を積み、パリのエルメスへ。パタンナーとデザイナーを兼任する「3Dデザイナー」として働いた。

「欧州のブランドでは日本人の腕への信頼度が高く、重宝された。欧州に骨を埋める覚悟だった」という寺西に、転機が訪れた。16年にパリで開かれたファッション素材の見本市「プリミエール・ビジョン」で見た、螺鈿織や牛首紬の手仕事に衝撃を受けた。

染色した糸で折り上げるリボン織りの工程。

染色した糸で折り上げるリボン織りの工程。


「MIZENでも使用している白山工房の牛首紬は、玉繭から手で糸を紡ぐと聞き、非常に驚きました。シルクや手織りだから高いと思っていましたが、それだけではない本来の価値の大きさに気づいたんです」

それから日本各地の産地に残る製糸や染め、織りの技術を調べ、帰国のたびに現地を尋ね回った。貴重な技法やその担い手が消えていこうとしていることにショックを受け、新たなファッションサイクルの必要性を痛感した。2年間の調査の末、18年に帰国。

「受け継がれてきた日本の技術への信頼により、海外で恩恵を受けた自分が技術を残したい」と、個人でブランドを立ち上げた。さらに産地の持続可能性を高めるため事業拡大を目指し22年「MIZEN」を始動。最近は、外国人観光客の来店も増え、職人の手仕事に感激して数百万円分を購入した人も。

有松鳴海絞りは、100種類以上の絞りの技法を誇るが、年々技法は減少している。武士に愛された「鎧段絞り」に、竜巻や昇竜を連想させる「竜巻き絞り」という技法を重ね合わせて、MIZEN独自のデザインに。

有松鳴海絞りは、100種類以上の絞りの技法を誇るが、年々技法は減少している。武士に愛された「鎧段絞り」に、竜巻や昇竜を連想させる「竜巻き絞り」という技法を重ね合わせて、MIZEN独自のデザインに。


「これからは人と人のつながりにこそ、価値が見出される時代。職人や手仕事を感じたいから服を買う。纏うことで文化継承も担うことにもなる。伝統に寄り添いながら、新たな循環を生み出していきたい」



督 あかり=文 小田駿一(メイン)=写真
記事提供=Forbes

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