HBOCの診療はまだまだ不十分
遺伝子情報を生かした診療体制を整えるための一番大きなハードルは、「日本では病気にかからなければ、健康保険が適用されないこと」だと大住医師は指摘する。
遺伝性のがんに詳しい大住省三医師(写真:本人提供)
大住医師は約20年間、遺伝子検査などの保険が通らなかった状況を歯がゆく思ってきた。検査が保険で受けられるようになったことを評価するが、まだまだサポート体制は不十分だという。
「未発症の方の診療を保険で認めるということは、日本の保険制度を根本的に変えないと難しいが、それでも以前に比べれば大きく進歩していると思う。今後も国会議員をはじめ、多くの人にもっと関心を持ってもらい、実現させたい」と抱負を語った。
そうした意味でも今回、ブラザー・コーンさんが男性乳がんを患ったことを公表したことは、大きな一歩なのかもしれない。
大住省三医師
松山市民病院顧問
1957年、徳島市生まれ。1982年、岡山大学医学部卒。岡山大学大学院(病理学)卒業後、1986年、岡山大学医学部第2外科入局。国立岡山病院外科、愛媛県立伊予三島病院外科、米国スタンフォード大学(病理学)留学などを経て、1993年から国立病院四国がんセンター(現・独立行政法人国立病院機構四国がんセンター)外科。乳腺外科医長、がん診断・治療開発部長などを務めた。2023年4月より現職。専門領域は乳がんの早期診断、縮小手術、遺伝性腫瘍。日本乳癌検診学会評議員、日本遺伝性腫瘍学会理事。