獰猛な波にも臆せずテイクオフができるか
プロサーファー 堀口真平さん●1982年、和歌山県生まれ。 日本での台風の波や、ハワイやタヒチなど、 数多のビッグウェーブで経験を積み重ねてきた日本を代表するビッグウェーバー。 また現在はハワイ・オアフ島に在住し、 サーフィンスクール&ガイドを展開。 海からの学びを次世代に伝える 一般社団法人「海の学校」で理事を務める。
「チョープーは巨大なチューブに真価があります。そのような波は世界広しといえど数えるほどしか存在しないのですが、それは地形の賜物。
外洋からやってきたうねりが海底の岩棚に当たって一気に掘れ上がることで生まれる波なのです」。
岩棚にあたるまで、波の源となる“うねり”は深い場所を行き、岸辺を目指す。そして岸辺に到達する寸前に突如深度が浅くなることで多量の海水は大きく盛り上がり、底掘れする形で巻いていき、大きな空洞を作りだすことになる。
なだらかな海底では起こり得ない現象であり、瞬時に水が大きく移動するのは一気に浅くなるからこそ。
ミスをしたサーファーは波にのみ込まれて岩盤の餌食となる可能性をはらみ、ここにチョープーの波が“獰猛”と言われる理由の一端がある。
「万が一の状況に対する恐れに負けず、急激に掘れ上がっていく波の速さに適応し、サーフボードを適切にコントロールしていく必要があるように、高次元のメンタルとスキルを求められるのがチョープーです。
ただ、最も困難なのがテイクオフだともいえます。極端にビッグサイズの波となった場合は別ですが、2mほどのサイズなら、臆せずドロップして波の懐に入ることができれば、あとはチューブの出口に向かって一直線。
各国を代表するトップサーファーたちなら、メイクはそれほど難しくないはずです」。
チョープーの波は河口の波のようだと堀口プロは言った。
川から流れてきた砂が堆積してできた州に、沖からのうねりが当たって生まれる河口の波は形が美しく、正しくポジションを取ったサーファーをエスカレーターのように出口へ誘ってくれる。言うなれば素直なのである。
一方、海底が岩盤や岩棚で生まれる波の多くは、それほど素直ではない。その様子を堀口プロは、彼が愛するオアフ島のサーフスポット、パイプラインを一例に教えてくれた。
「わかりやすいところだと、パイプラインでは『チューブにならない波もある』ということです。またテイクオフをして波の懐に入ったあともパイプラインとチョープーでは違いがあります。
パイプラインはチューブの中で走っている最中に空間が小さくなったり出口が見えづらくなることがありますが、チョープーはチューブが大きく出口は常に見えています。焦る必要がないんです」。
プロの目から見て、テイクオフはワイルドだが、その後はビューティな波。それがチョープーなのである。
3/3