職人のハンドメイドによる品質の高さ
ジェームスグロースの革ジャンは、このために厳選されたレザーを用いて、職人が丁寧にハンドメイドしているその高品質が持ち味。
レザーもモデルによっては、ホース、カウ、シープと3種類揃えるなど、好みに応じた選択ができるのも魅力である。
どの箇所にどの部位のレザーを使うか、縫い方はどうするか、など、細部にわたるまで、職人の経験とこだわりが感じられる。
ダブルジャケット「ニューマニラ」では、腹部にタンクを傷つけないような仕様が施されていたりもするのだ。
職人がこだわる物作りへの思いもまた、噺家として芸の研鑽に通じるものがあるようだ。
「古典落語も、ひとつの話を延々時間をかけてブラッシュアップしていく世界なんです。よりいいように、よりいいように、って。C級からB級、B級からA級、A級からS級っていう具合です」。
「自分と重ねるのも気が引ける」としながらも、ジェームスグロースの職人芸に自らを重ねつつ、感嘆しきり。
「僕らも話芸ですから、セリフの間や吐き方を、日々、こうしたらどうか、ああしたらどうか、って突き詰めていきます。長い歴史のブランドですから、きっと細部まで手を抜かないんでしょうね。
着用した感覚でいえば、僕のいう“S級”の仕上がりじゃないかな。そんな完成度の高さを感じます」。
ダブルブレストで往年のライダーズ感が堪能できる「ニューマニラ」は、すっきりフレンチプレッピーにこなしても面白い。細めのボーダーカットソーと、オフホワイトのペインターパンツで軽やかなモノトーンに。
例えば、ダブルブレストの定番「ニューマニラ」では、着丈を現代的な長さに調整。それに応じて、袖丈なども長くなりすぎないようにフィットされている特徴がある。こうしたブラッシュアップは、鯉斗さんの話にも通じるところだろう。
いわゆる「ロンジャン」と呼ばれる丈長タイプのダブルライダーズ。英国の伝統的な要素を継承しながら、日本人向けの袖丈にするなど、サイジングなどがアップデートされた。ウエストバックルを背面に設置して、すっきりした印象に。着用はホースレザー。21万4500円/ジェームスグロース(グリニッジショールーム 03-5774-1662)
「僕ら噺家は、何百とある古典落語を覚えるだけじゃなくて、自分のものにしていきます。それはもう果てしない作業。完成がない。それが楽しいところでもあるんですけどね。
さらに、その場にあった一席を選んでお話させていただく。そういう作業ひとつとっても、正解はないんです」。
適切な革選びや、ディテールへのこだわりなど、職人の作り込みの話を聞くほどに共感する鯉斗さんだった。
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