──企画が動き出してからクランクアップまで約4年間。その間、この作品に対しての想いはどう変化しましたか。 齊藤:実は企画が走り出してすぐに、コロナ禍に突入しました。緊急事態宣言下では、多くの人が「家」にとどまり続けるという状態になりましたが、そうすることで見えてくるものがありました。
例えば、家族がひとつ屋根の下に居続けることで、ストレスが増加するというケースもありました。それが凄惨な事件につながることも。本来、安息の地であるはずの「家」に対する疑念や疑心がでてきたことで、『スイート・マイホーム』という作品が、僕の中で重要な意味を持つものになっていきました。
「家」は安息の場か、否か
──作品の大きなテーマである「家族」。お二人の「理想の家族」とは? 神津:何があっても帰れる場所。自分がどういう状態でも帰りたいなと思えて、逆に迎えてあげられる。そんな存在ですかね。本作とは真逆の形ですが……。
齊藤:僕は、家族=家で、家の輪郭=家族というイメージを持っています。「サザエさん」のエンディングに出てくる家のようなイメージです。
ただ、僕自身は不貞にまつわる作品に不思議と縁があり……そのせいもあって結婚が遠のいている気もするんですけど(笑)。
映画「スイート・マイホーム」は9月1日より全国公開(c)2023『スイート・マイホーム』製作委員会 (c)神津凛子/講談社
──少し前に比べると、作品が描き出す「家族」も変化していますね。 齊藤:そうですね。これまでは比較的、「結婚して家庭を持つ」というのが物語のゴールである場合が多かった。それが2010年代ごろからは、「結婚してからが本当のドラマだ」という風潮が生まれてきました。安息地である「家」の中には、見てはいけないようなパンドラの箱が絶対にあるのだと。
ただ、そうしたネガティブな部分を描くことで物語はより日常に近くなり、視聴者は“自分ごと”につなげやすいかもしれません。僕も華やかな仕事が終わって疲れて帰った後、家に1人でいるときとか、大きな収入が入ったときのATMの前とか、超やばい目をしてると思います(笑)。見てはいけないネガティブな部分です。
本作もそんな“日常”に切り込んでいる作品なので、楽しんでいただけると思います。