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Q4.時間の使い方について、影響を受けたり、参考にしたりした人はいますか?

師匠とおかみさんですね。師匠は、寄席や落語会のほかにTV番組の生放送や、ドラマや映画の俳優業もされています。それでも稽古の時間をしっかり取っているのを間近で見ていたので、「時間がない」は言い訳にならないことを勉強させていただきました。また、その師匠がいかに過ごしやすいかを考えて動くおかみさんの姿も印象的でした。



Q5.前座と二ツ目では、時間の使い方はどう変わりますか?

前座のときはルーティーンの前座修行があり、それに加え、呼ばれたらすぐに駆けつけなくてはならないので、師匠のご自宅の隣に住んでいました。住み込みではありませんがそれに近い状況で、自由になる時間はほとんどありません。

たまたま早く帰ることができた日は、友達に会いに出かけることもあったのですが、万が一、家の前で師匠やご家族にお会いすると気まずい雰囲気になってしまうので…、そういう時は変装して出掛けるようにしていました。

ここだけの話ですよ(笑)! でも、その前座のがんじがらめの期間があったからこそ「二ツ目以降になったら自分のやりたいことをやろう」という気持ちが強く芽生えて、体力的に厳しい時も耐え抜くことができたのだと思います。

二ツ目になってからは、前座の頃から漠然と考えていたことを具現化するために自分から動かなくてはなりません。師匠は、私が前座の頃からよく「女性にしかできない噺もあると思う」とおっしゃってくださっていたので、二ツ目になってからは、いろいろなことに積極的に挑戦することができました。

それでも評価が得られなかったり、周りの方がどんどん活躍しているのを見たりして落ち込むこともありましたが、そのときは初心忘れるべからずというか、やっとやりたいことができるようになったのだからここでつまづいている場合ではないと、前座修業の日々を思い出すようにしていました。それがバイタリティになっていましたね。

Q6.修行や稽古で師匠と向き合う時間をどう捉えているか、教えてください。

ありがたいことに、2024年3月に真打に昇進することが決まったのですが、最近になり、師匠は私を一人の噺家として、同じ目線で話してくださっているように感じます。ご自身のこれまでのご経験や辛かったことなども教えてくださり、最近では「出る杭は打たれる。打たれて強くなれる」という言葉をいただきました。

うちの一門は集まる機会の多い方だとは思いますが、師匠はもちろん、おかみさん、大おかみさん(⁠海老名香葉子さん)も良くしてくださるので、いつでも相談できる環境にあるのは非常にありがたいことだと感じます。



Q7.高座の時間のやりくりの仕方を教えてください。

寄席では、二ツ目は持ち時間が10分ないし15分と決まっています。持ち時間を超えてしまうと、お後の師匠に影響が出てしまうのでプレッシャーがかかるところではありますし、前の出番の方が長かった、短かったなどで時間を調整してほしいと言われることもよくあります。

寄席には高座から見えるところに必ず時計が置いてあるので、時計を見ながら噺を調整していきます。「噺の中のここを抜けば少し縮められる」などと考えながらやりくりしますが、お客様の反応もあるので、稽古で練習していてもその通りにいくわけではありません。

こればっかりは高座に上がらないと、感覚がつかめないですね。臨機応変に対応する力はついて、プライベートでも「すきま時間」の使い方がうまくなりました。


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