その思想は素材開発、生産態勢にまで及ぶ
創業者のローリー・ファースト。
キーンはローリー・ファーストが2003年に創業した。
法律家を目指していた1970年代前半、街ゆく人のスニーカーのソールは決まってボロボロだった。修理することができれば多くの人が喜ぶんじゃないかと閃き、立ち上げたのがアメリカンアスレチック社だった。ソール交換を謳う新聞広告を出すと900足のスニーカーが送られてきたという。
フットウェアの魅力にとりつかれたローリー・ファーストは業界でキャリアを重ね、キーンにたどり着く。
キーンのファーストモデルとなる「ニューポート」はサンダルを履いた友人がボートのデッキで足趾を怪我したのがきっかけだった。そうして誕生したのがつま先を守るトゥ・プロテクションであり、いまだかつてないデザインをまとった「ニューポート」は“世界一不細工なサンダル”といわれた。
創業時の広告。
フィット感に限界のある面ベースの設計構造に別れを告げ、ストリングスでアッパーを構成するというアイデアをかたちにしたのが「ユニーク」だった。立役者は、息子のローリー・ファースト Jr.である。
キーンのモチベーションは直面する問題に向き合い、正解を導くことにある。それは単なるものづくりにとどまらない。
2010年にはお膝元のポートランドに念願の自社工場を設立するも、現在は世界各国でつくっている。この生産体制も好例だ。
生産拠点を世界へと広げたのはそれぞれのモデルにふさわしい技術を追い求めた結果であり、手の届くプライスを実現するためでもある。そこに労働搾取のような発想は微塵もない。
いくつかの工場は傘下に収め、取引先のひとつであっても手厚くもてなす。コロナ禍で注文が途絶えた時期にはマスク生産に踏み切ることで雇用を守った。
ポートランドにつくった自社工場。
サステナブルへの取り組みも素通りできない。2014年にスタートさせたDetox the Planetがそれだ。2021年度末までに1万1000時間、120万ドルを費やしてきたその取り組みはフッ素化合物を排除した撥水加工やケミカルフリーの防臭加工の開発、LWG(レザーワーキンググループ)認定レザーやリサイクルP.E.T.の採用……といった具合にサステナブルを語る際に取りざたされる問題のほとんどをクリアしている。
どこをとってもキーンはワードローブに加えて損のないブランドであり、「WK400」はファースト・キーンにもってこいだ。
[問い合わせ]キーン・ジャパン03-6804-2715https://www.keenfootwear.jp/ja-jp