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当記事は「Forbes JAPAN」の提供記事です。元記事はこちら。 この4月、8.5万回閲覧された「日本のコンビニのクレイジーなすばらしさ」についてのツイッター投稿がある。
「Testkube(テスターとデベロッパーのためのテスティング・フレームワーク)」のウェブ・デベロッパー Alejandra Thomasの、「東京の清潔さと物価の低さ、安全さ、公共交通機関の快適さを体験したあとで、一体どうやってニューヨークに帰れっていうの?」という投稿である。
日本のコンビニのすばらしさは「正気の沙汰じゃない」?
この後に続くコメントの数は77件。
まずは「日本はセブン=イレブンだけでずっと暮らせるクレイジーな国! コンビニに全部ある、手に入らないものはない」というコメントがついた。
そこにAlejandraが「日本のセブン=イレブンで売ってる食べ物は正気の沙汰じゃないくらいヘルシーで安い。たとえばフルーツや野菜のスムージー、米、サラダ、プロテイン飲料、調理済みの鶏のむね肉、豆腐、サーモン……。しかも全部買っても10ドルしない。もしニューヨークでセブン=イレブンから買ったもので食事したら、1週間は寝込むことになるよ」と返す。
その後も、「東京、地下鉄の椅子が布張りなのには仰天した!」「家族と行ったけど、ローソン、ファミリーマート、セブン=イレブン……。あんなコンビニを見た後では帰りたくなかったよ」「目をつぶって! 帰国便を予約するしかないね!」といった「東京礼賛」のコメントが延々と続くのは壮観だ。
日本の「Konbini」は社会の小宇宙
思えば2021年の東京五輪でも、外国人選手や海外メディアの記者らが日本のコンビニを絶賛する投稿がSNSを相当騒がせた。
たしかに、サラダからメイン、パンやごはん、デザート、アルコールにコーヒーといったフルコースのメニューが整うし、食べ過ぎた時の胃腸薬、食後の片付けの食器洗剤から寝る前シャワーのシャンプーに至るまですべてが、しかも24時間いつでも手に入るのは、外国人観光客には「クレイジー」なくらい最高と映っても不思議ではなかろう。
日本のコンビニ(Konbini)の研究者であるハーバード大エドウィン・O・ライシャワー日本研究所のエグゼクティブ・ディレクターで、国際基督教大学の日本研究メジャーコーディネーターでもあるホワイトロウ・ギャヴィン博士も「日本の「Konbini」はすでにコンビニエンス・ストアの域を脱している。それはすでに社会の小宇宙であり、現代日本のダイナミクスと世界における役割を理解する上で欠かせない要素である」と書いている。
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先進国の中でも労働賃金が低いことがこうした安価で質の高い商品が棚に並ぶことの一因にもなっていることを考えれば、ギャヴィン博士が日本を「コンビニの国(Konbini-Nation)」と名付けたことがやや皮肉にも思えるし、「引っ越したい」「この国に住みたい」と熱狂する外国人観光客たちに「いいことばかりじゃないかもよ?」と言いたくもなる。
だが、夜道に煌々と輝くあの光(海外のコンビニはたいがい薄暗い)に夏の虫のごとく吸い寄せられ、今夜も気がつけばドアを押し──その先に広がる小宇宙を当たり前に謳歌できるわれわれ日本人は、間違いなく世界がうらやむ「コンビニ王国」の住人なのではある。