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言葉②羽生さんも、藤井さんも、頂点にいる方ほど貪欲に次のステップに進もうとしている



Q:深浦さんは2007年の王位戦で、羽生善治名人に4勝3敗で勝利し、初タイトルとなる王位タイトルを奪取しました。35歳での初タイトルは当時史上4番目でした。どのような思いでこの一戦に臨まれたのですか?

私が初めてタイトル戦に出たのは(1996年の)24歳の時で、その相手が(当時)全冠制覇の羽生七冠だったんです。 自分はまだ五段で、キャリアも全然違うけれども、その時点まで2勝2敗でしたので、自分もやれるものはあるんだと思って戦っていったんです。

やはり準備はしましたけど、奇策に走ってしまったんです。自分の一番強いところを出せなかったんですね。結局1勝4敗で、一局は勝てましたけど、全体を見れば大差でしたね。



Q:その奇策に出てしまった経験が、後のタイトルがかかった再戦時に影響を与えたと?

次のチャンスが訪れたのは35歳で、もう11年が経ってました。11年前の自分の悪いところをしっかり反省して、同じ轍を踏まないようにということは考えました。

事前準備として終盤の競り合いに特化して日常的に取り組んでいったわけです。すると、タイトル戦でも非常にうまくいって。羽生さんも終盤は強いんですけど、羽生さんと互角に戦えて、結局4勝3敗で奪取できた。やはり自分と羽生さんとの差がわかった24歳の時から、35歳の時はしっかり分析して取り組んだことが、タイトル奪取に繋がったのかなと思いますね。

Q:幼少期負けず嫌いな性格だったというお話でしたが、プロとして実績を残していく中で、「負け」との向き合い方に変化はありましたか?

今でも負けた後はめちゃくちゃ悔しいです。悔しいんですけど、ある時に自分の悔しさの期間は2日間っていうのが分かったんです。自分は本当に至らないんですけど、負けた日には反省できないですね。

3日目からもうケロッとして次に向かえるので、もうそういった周期がだんだんわかってきたので、当日と次の日はもう何やってもダメなんで、時間が過ぎるのを待ちます。



Q:これだけ実績を残しても心から悔しいと思えるのはなぜでしょうか?

やっぱり将棋が好きだし、将棋のことを分かりたいと思いますし、そういうとこに尽きますかね。やっぱり寝ても覚めても、今でも強くなりたいっていうのが原点かなと思います。

今の将棋のトップ棋士は藤井聡太さんですが、藤井聡太さんも6冠、7冠とタイトルをどんどん増やしてますけどあまり喜んだ様子がなくて、次の課題を見つけたり、将棋やった後も反省点を見つけて次に繋げたりっていう。

羽生さん、藤井聡太さん。頂点にいる方ほど貪欲に次のステップに進もうとしているので、我々は決して満足できないですし、やっぱり今の藤井聡太さんとタイトル戦で戦ってみたいとも思いますし、戦ってもし勝てたらどういった世界なんだろうなっていうことも想像して、ずっと対局してますね。

Q:深浦さんから見て、羽生さんと藤井さんの違いはどこにあるとお考えですか?

羽生さんは昔から多彩な戦法、多彩な技を持つオールラウンダーで、いろんな戦法のスキルが高い方なんですよね。逆に藤井聡太さんはスペシャリスト。1つの戦法を深く掘り下げてやっています。

そして、藤井さん、間違えないんですね。 今、Abemaさんとか中継でやってますけど、AIが示した手をほぼ指してくる。指してくるってことは、勝利に向かってずっと進んでいるってことなので、相手の対戦者は間違えて少しずつ差が開いてくるんです。これを「藤井曲線」って言うんですが、本当にこの間違えないっていう棋士は唯一無二で、本当に驚きの方が将棋界に出てきたなっていう思いがありますね。


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